許されるなら一度だけ恋を…
「何その返し方。めっちゃ可愛いやん」

奏多さんはそう言って私を抱きしめる。そしてそのまま私の耳元で話し始めた。

「俺、考えてる事があるんや。まだ全部は言えんけど、一つだけ言えるのは多分近いうちに俺は華月の家から出て行く事になると思う」

「え?」

私はどうして?と思いながら奏多さんの顔を見る。暗くて薄らとしか分からないけど、優しい表情で私を見つめているように見えた。

「俺は桜の側に居られるなら何でもする、そう決めたんや。悪いようにはせんから……俺を信じて待っててな」

奏多さんは私に顔を近づけて、私のおでこに奏多さんのおでこをコツンと当てる。

「そろそろ帰らなあかんな。おやすみ。またデートしような」

「はい。奏多さんも気をつけて帰って下さいね」

私は車を降り、帰っていく奏多さんを見送る。

それにしても、奏多さんの考える事って何だろう。
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