許されるなら一度だけ恋を…
「そろそろ事情を話してくれませんか?」

手を胸に当てて乱れた息を整えながら光さんを見る。

「華月家できっと奏多が暴走するはずだから、とりあえずアンタを連れて行こうと思って」

「華月家で奏多さんが?どうして……」

「奏多が桜さんの事でアクション起こすからに決まってんじゃん」

私の事で奏多さんが華月家で暴走……まさか付き合っている事を父に言うつもり?

私は近いうちに華月家を出て行く事になる、という奏多さんの言葉をふと思い出した。

「光さんは奏多さんのご友人ですよね?どこまで私達の事情を知っているのですか?」

「全部知ってるよ。奏多から相談されてたし。っていうか奏多は俺の事紹介してないの?」

私はコクンと頷く。

「アイツめ。じゃあ改めて……俺の名前は一ノ瀬 光、奏多の弟だよ。桜さんより年下だから『さん』付けで呼ばなくていいし」

そう言えば、京都で奏多さんが大学生の弟がいるって言ってた気がする。

「光さ……光君は関西の言葉じゃないのね」

「あぁ大学こっちだし、友達と話してたら標準語になっちった。京都に帰ったら関西弁出るけどね」

私達は歩きながら話をする。光君をよく見ると笑ったところとか特に奏多さんに似ているかも。

「それで奏多さんは何をしようと?」

「それは俺の口からは言えないし、まずは華月家に行ってみたいと何とも……。ここから家近い?」

「近いけど」

「よし、道案内よろしくな」

そう言って光君は私をお姫様抱っこして走り出した。
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