許されるなら一度だけ恋を…
「えっ!?」

「ちゃんと掴まってて。その格好だと走れないっしょ?急がないと間に合わないよ」

よく分からないけど光君の言う通りに掴まって、抱えられたまま頭の中を整理する。

父に私達の恋愛報告するだけで光君が慌てるほど騒ぎになるかしら?もしかしたら他にも何かあるのかも……

奏多さん、一体何をしようとしているの?

気がつくともう華月家の前まで来ていた。

「あっここです」

光君はピタッと止まり私を降ろす。そして華月家を見上げて『へぇ』と声を漏らした。

「でかい家だな。とりあえず奏多達が居そうな部屋に案内してくれ」

奏多さんと父が話をするとしたら恐らく大広間……私は急ぎ足で廊下を走り、大広間へ光君を誘導する。

大広間の前に着くと確かに部屋の中に誰かがいる気配がした。私は一度大きく深呼吸をする。そして『失礼します』と言ってゆっくりと障子を開けた。

部屋に入ると想像通り重苦しい空気を感じた。父と母、その前に奏多さん……そして何故か奏多さんの父親と母親がいる。

どういう事!?

その場にいる全員が突然入ってきた私と光君の方をパッと向く。

「何で二人がここへ?」

驚いた表情で奏多さんが私達に声をかけてきた。
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