許されるなら一度だけ恋を…
「そんなん修羅場にならないように桜さんを連れてきたに決まってるだろ？感謝しろよ」

光君は奏多さんを見てニヤッと笑みを見せた。

「……二人とも座りなさい」

父は神妙な表情をして私達にその場に座るよう指示する。

「話を続けようか。奏多、一ノ瀬の実家を継げない理由は何だ？まずそこを両親に説明しないと」

どうやらまだ話は始まったばかりみたいだ。それにしても一ノ瀬の実家を継げないって、奏多さんどうして？

私は奏多さんに声をかけようとしたけど、奏多さんを信じようと思い言葉を飲み込んだ。

「うちの両親、奏多が一ノ瀬の実家を継げないって電話したら電話でする話ちゃうって言って、速攻で華月家に乗り込んで来たんだ」

隣に座っている光君がコソッと私に耳打ちしてきた。

奏多さんは目を瞑り、一呼吸してまた目を開く。その目つきは真剣なものになり、全員奏多さんに注目する。

「家元……ハッキリ言わせてもらいます。僕は桜さんに想いを寄せています。桜さんは華月流の大事な一人娘、僕もずっと一ノ瀬の実家を継ぐ事だけを考えてきましたし、この想いは許されるものではないと分かってます。それでも想いを秘めとく事は出来ませんでした」

奏多さんは私の方を見て優しく微笑む。

「奏多が桜を……。桜、お前はどうなんだ？」

父は奏多さんの告白に一瞬驚きを見せたが、すぐに私の方を見て尋ねてきた。

「……私も奏多さんと同じ気持ちです。もちろん自分の立場は分かっています。でも想いを抑えきれませんでした」

私も奏多さんに微笑み返し、ハッキリと父に言った。
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