許されるなら一度だけ恋を…
「いや似合うと思うぞ。お前無駄に顔だけはいいし。まぁ取り敢えず着てみろよ」

そう言うと蒼志は桜色の(あわせ)着物の前に立ち、ニッと笑みを浮かべて私を見る。

『似合うと思う』その言葉が私にとって何よりも嬉しかった。

「無駄にって何よ。取り敢えず着てみるだけだからね」

照れを隠すようにそう言って、和室から蒼志を追い出す。大丈夫かな?私、顔がにやけてないかな?桜色の(あわせ)着物に着替えて鏡で表情を確認する。

「まだかぁ?」

和室の前で待っている蒼志から催促され、私は慌てて身だしなみを整える。

「……どうぞ」

私の声を聞くと蒼志は和室の戸を開けた。そして桜色の(あわせ)着物を着た私を頭からつま先までじっくりと見てくる。この少しの沈黙が更に私をドキドキさせた。

「へぇいいじゃん。よし、天気も良いしこのまま外に撮影行くぞ」

蒼志は撮影準備をするため先に和室を出る。はぁ、めっちゃ緊張した。一呼吸して私も和室を出た。
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