許されるなら一度だけ恋を…
「ではこれで失礼します。桜さんもお仕事頑張って下さいね」

「は、はい」

蒼志との話が終わった奏多さんは、帰り際に私にも声をかけてくれた。でも何だか緊張してしまい言葉が詰まってしまう。

奏多さんが帰った後ホッと一息ついていると、じぃっと蒼志が私をガン見してきた。

「何?」

「奏多さんと何かあったのか?」

「別に何もないけど、急に何?」

「なんか桜の態度がいつもと違う気がしてさ」

「そんな事……ないでしょ」

奏多さんと何かあった訳じゃないけど……実は京都に帰ってしまうと聞いてから、私は奏多さんと殆ど話をしていなかった。

奏多さんはいつも通りだけど、私が少し避けているのだ。理由は分からない。ただ、何を話していいか悩んでしまっている状態だ。

蒼志がずっと疑いの目で私を見てくるので、その事を話してみる。

「お前それってさ、奏多さんの事が好きなんじゃないか?」

「えっ?」

何言ってるの?と思いながら私は眉間にシワを寄せる。

「だってさ、奏多さんが京都に帰るのが嫌なんだろ?離れたくないんだろ?」

「……うん」

「それって好きなんじゃん?俺は前から桜は奏多さんの事が好きなんだろうなって思ってた。だから俺の事が好きって言われた時も嘘だろ?と思ったし」

私が奏多さんの事を?確かに奏多さんの事は好きだけど、それはお兄さん的憧れみたいなもので……
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