許されるなら一度だけ恋を…
「ただいま戻りました」

長かったお見合いからようやく解放されて、私は母と一緒に家へ帰った。やっと一息つける。

華月家は風情溢れる日本家屋だ。門を開くと先程歩いた日本庭園まではいかないが、毎日庭師の方が丁寧に手入れしてくれている美しい庭園もある。三月の今は梅の花が綺麗に咲き、春を感じさせてくれる。

母は着替える為に自分の部屋に戻り、私はお見合いの報告をする為そのまま父のいる大広間へと向かう。

「帰ったか。それで今回は大丈夫そうか?」

父は私の顔を見るなり、早速お見合いの感触を聞いてきた。私は答える前から無表情で白けたような表情をしていたようで、父は私の様子から全てを察し、はぁっと溜め息を漏らす。

「また駄目か。全くお前は結婚する気はあるのか?」

「……する気はあるけど、一生の事だしきちんと見極めないと」

「気持ちは分かるが……もう時間はないぞ。約束は守ってもらうからな」

「分かってる」

父に約束の念を押され、私は少し睨むような目で返事をした。

時間がないのは分かってる。
約束は守る。

でもギリギリまで諦めたくないんだ、私。
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