許されるなら一度だけ恋を…
「それは大変だな。分かった。気をつけて京都に戻りなさい」

「はい」

父は湯呑みを持ちお茶を飲む。そして少し間をおき、また話を始めた。

「奏多、良ければ桜も京都茶会に参加させてくれないか?」

「ちょっとお父さん、何言ってるの!?」

「何って、お前も茶会に参加して色々勉強して来い。それに一ノ瀬にも俺の自慢の娘を紹介したいしな」

父は笑いながら京都行きを進めてくる。確かに勉強になるかもしれないけど、奏多さんに迷惑かけてしまうじゃない。

「桜さんが茶会に来て下さるなら僕も心強いですけど、無理には京都まで連れて行けませんし」

奏多さんと父は私の方を見て返事を待っている。何かもう京都に行かなければいけない雰囲気になってるし。

「分かりました。奏多さん、私も京都茶会に参加させて下さい」

「ありがとうございます。明日には京都に戻りますが大丈夫ですか?」

「はい」

「では僕の実家に部屋を用意しますね」

こうして私の京都行きが決定した。話も終わったので、私は奏多さんを玄関の外まで見送る。

「桜さん、本当に良かったのですか?今ならまだ京都行き断れますよ」

「いえ、こちらこそ父が無理言ってすみません。逆に私が一緒に京都へついて行っても大丈夫ですか?」

「もちろん、僕は大歓迎ですよ。じゃあ明日迎えに来ますね」

奏多さんはニッコリしながらそう言うと、そのまま手を振って帰って行った。

奏多さんと一緒に京都へ……私、ちゃんと平常心を保てるかな。

< 36 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop