許されるなら一度だけ恋を…
それからまたタクシーに乗って、奏多さんの実家に向かった。

移動中、タクシーの窓から外を見ると、綺麗に並んだ日本家屋の建物が歴史を感じさせてくれる。

そしてタクシーが止まり、奏多さんの実家に着いた。華月の家と同じ日本家屋で何だか落ち着く。

「どうぞ」

奏多さんに案内され玄関に入る。私は靴を脱ぎ、お邪魔しますと言いながら奏多さんの後ろをついていく。

「こちらの部屋を使って下さい。僕も部屋に荷物を置いて来ます」

そう言って奏多さんは二階へ上がった。私は一人になり、全身の力が抜けたようにその場に座り込む。

「奏多さんと二人きりかぁ」

意識しちゃってるのがバレないように気をつけよう。

「桜さん、こっちでお茶飲みませんか?」

色々考え込んでいると、奏多さんが扉の向こうから声をかけてきた。

「はい。ありがとうございます」

私は身だしなみをパパッと整えて、奏多さんのいるリビングへ行った。

「紅茶で良かったですか?」

「はい」

テーブルの上に入れたての温かい紅茶が二つ置いてある。紅茶の横にはミルクと砂糖も用意されていた。

私はテーブルの前に座り、紅茶にミルクと砂糖を入れてカップを口にした。
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