許されるなら一度だけ恋を…
「では行きましょうか」

奏多さんと夕飯を食べに外に出る。空はすっかり暗くなっていて、雲から少しだけ月が姿を見せている。

日本家屋の並びが続く道の前には、サラサラと音を立てて流れる川と、昼間とは違う美しさを見せる夜桜があり、思わず歩くスピードが遅くなった。

「こういう素敵な道をゆっくり眺めながら歩くのに憧れてました」

私は奏多さんの方を見て笑みを溢す。奏多さんもそんな私を見て笑みを返してくれた。

「それは良かったです」

二人でゆっくりと夜桜を堪能しながら歩き、奏多さんのオススメの店に到着した。

「あら、一ノ瀬さんとこの奏多君やないの」

店の中に入ると、顔見知りなのか料理を配膳していた女性の店員が奏多さんに声をかけてきた。

「お久しぶりです」

奏多さんも笑顔で挨拶をする。そしてそのまま案内され席についた。

「またえらい美人の彼女を連れて帰って来て、ご両親も喜んではるやろなぁ」

「ははは」

注文を取った後、少し奏多さんと話をして女性店員は厨房の方へ戻っていった。
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