許されるなら一度だけ恋を…
「奏多さん、否定しなくていいんですか?私が奏多さんの彼女って勘違いされてますけど」

「否定した方が良かったですか?」

「い、いえ私はどちらでも良いですけど」

最近、時々見せる奏多さんの全てを見透かしたような笑みに動揺した私は、目の前のお冷やを飲み落ち着こうとした。

しばらく奏多さんと世間話をしていると、美味しそうな湯豆腐のコース料理が出てきた。猫舌の私は熱々の湯豆腐を時間をかけてフゥフゥして食べた。

店特製のタレがまた美味しくて思わず笑みが溢れる。その様子を見た奏多さんは何故かクスッと笑った。

「桜さんって、クールビューティーな見た目から時折見せる可愛さがなんかいいですよね」

「それって褒め言葉ですか?」

「えぇ、もちろん」

またニコッと笑みを浮かべて私を見る。私は恥ずかしくなってパッと下を向いた。

多分、顔赤くなっているけど……奏多さんにバレてないよね?

確認するようにチラッと奏多さんの方を見る。その僅かな私の視線にも奏多さんは気づき、やっぱり全てを見透かしたような笑みを返してきた。
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