許されるなら一度だけ恋を…
「……なるほど、蒼志君が心配する訳だ」

「何か言いました？」

「いえ、何でもないです」

奏多さんの不敵な笑み……

いつもなら引き下がるところだけど、酒に酔っているせいか私は奏多さんにグッと寄り、顔を近づけた。

「ダメです。ちゃんと言って下さい」

奏多さんは驚いた表情をしながら私を見ている。そして参ったなというような感じで話を始めた。

「桜さんは酒に酔うと、肩の力が抜けるのか笑い方も可愛らしくなりますね。そしていつもの冷静完璧なイメージから無防備さが伺えて、男性から見たらより魅力的に見えます。だから蒼志君も、酒の席で桜さんに変な男性が寄り付かないか心配している訳です」

「自分では分からないですけど、それって隙だらけって事ですか？」

「ハッキリ言ったらそうですね。だから桜さんが気を許した男性以外との飲酒は控えた方がいいと僕も思います」

「そうですか。以後、男性とお酒を飲む機会があれば気をつけます。でも、今日はまだ奏多さんの隣にいてもいいですか？話したい事もあるし」

「話したい事？」

お酒の入った私はじぃっと奏多さんを見ながら、抑えていた感情を少しずつ奏多さんにぶつけようとしていた。
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