許されるなら一度だけ恋を…
「ずっと聞きたかったんですけど、私と話す時って何で敬語なんですか?」

「何でって、お世話になっている華月流家元のお嬢さんですし……」

「私は……もっと奏多さんとの距離を縮めたいんです。でも敬語という言葉の壁があって何か寂しい」

奏多さん、きっと困ってるだろうな。でも私の本音は溢れて自分でも止められない。お酒の力って怖いよ。

「桜さん、落ち着いて」

困った表情をしながら奏多さんは私の肩にポンと手を乗せる。暴走気味の私を落ち着かせようとしたのだろうけど、その触れた手が逆に私の暴走を加速させた。

「私、奏多さんの事……」

その瞬間、奏多さんの唇が私の唇に重なり、私の口から『好き』という言葉は声に出せなかった。

「……それ以上言うたらあかん」

唇が少し離れ、奏多さんは真剣な顔してそう囁いた。頭の中が真っ白になっていた私は、突然のキスに呆然となる。

「もう一度……キスしてええか?」

「はい……」

少し見つめ合って、私は自然と目を閉じた。そしてまた奏多さんの唇が私の唇に重なる。

お酒のせいか私の身体は熱く火照り、胸の鼓動もかなり早くなっていた。このドキドキ、奏多さんに伝わってるかな。
< 49 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop