許されるなら一度だけ恋を…
「そろそろ野点(のだて)の準備しよか」

「うちも手伝うわ」

マナさんはそう言うと奏多さんの腕にしがみつき、二人は部屋を出て行った。

野点(のだて)というのは屋外で行われるお茶会の事で、今日のお茶会は室内の茶室ではなく、野点(のだて)らしい。

「マナちゃんおると賑やかやな。桜さんはこっちの手伝いをお願いしてええかな?」

「はい」

私は無理やり笑顔を作って、茶会道具の準備やお茶に添える和菓子を用意する。

奏多さんとマナさんが仲良く一緒にいると思うとやるせない気持ちになり、頭から二人の姿を消そうと黙々と茶会の準備をした。

「桜さん、もしかして奏多と何かあったん?」

私の様子を見て奏多さんの母親が声をかけてくる。

「いえ……何もないですよ」

手伝いをしながら冷静に微笑みそう答えた。普段は感情を表に出さないよう気をつけているのに、もしかして今日に限って負の感情が顔に出てしまったのかも。

「なぁ桜さん。正直に答えて欲しいんやけど、奏多の事どう思てるかな?」

「ど、どうって……そんな」

突然の質問に私は手を止めて激しく動揺してしまった。私の気持ち、バレちゃってるのかな。心臓がバクバク鳴り始める。
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