許されるなら一度だけ恋を…
そう言えば、さっきの話の中で気になった事がある。

『奏多さんも恋愛に奥手になっている』って言ってた気がしたけど、もしかしてマナさんは彼女ではないのだろうか。

それとも付き合っているけどまだご両親に報告してないだけとか？

今分かる事は、二人は仲の良い関係という事と私はマナさんに牽制(けんせい)されたって事だ。

マナさんが奏多さんに好意を持っているのは間違いない。だから一緒にいた私を疎ましく感じたはず。

……って私、何考えているのだろう。さっきから奏多さんの事ばかり考えちゃってるし。

一回頭の中をリセットして冷静にならないと。下を向いて小さく深呼吸をした。

よし大丈夫。冷静になった私は用意した物をお盆に乗せて、外に運ぼうと廊下に出る。

「あっ桜さん」

廊下でバッタリと奏多さんに会ってしまった。頭の中をリセットして冷静になったはずなのに、一瞬にして動揺が始まる。

「か、奏多さん」

「運ぶの手伝いますよ」

ヒョイと私からお盆を取り上げるとニコッとする。

「奏多、野点(のだて)の準備は終わったん？」

私の後ろから奏多さんの母親が話しかけると、奏多さんは『終わった』と報告した。

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