未来の種ーafter storyー
「お待たせしました。
美衣子さん、申し訳ないけどもう一度見せてくれるかな。」

渡邊先生はそう言って、慎重にプローブを動かし始めた。

「うーん。たしかに逆子になってるね。
今…37週か。外回転させる方法もあるけど、確実ではないんだ。
それにそのまま結局は帝王切開になるパターンも少なくない。
痛みを伴うから、麻酔を…」

「あ、あのっ! 
私は赤ちゃんが無事に元気な姿で産まれてくれたらいいんです。自然分娩には拘りません。」

「…でも、お腹に傷は残るよ?」

「構いません。
1番安全な方法でお願いします。」

私のお腹なんて、別に傷が残ろうが全く気にならない。
赤ちゃんが元気に産まれてくれさえすればなんでも耐えられる。

「藤田先生、いいか?」

「美衣子がいいのなら予定帝王切開にするべきだと思います。
美衣子、念のため優にも同意書を書いてもらわなければならない。
俺から話そうか?」

「うん。ここへ来てもいいのなら、すぐに来れるよ。
終わる頃に迎えに来てくれることになってて、多分もう駐車場で待ってるはずなの。」

「そうか。渡邊先生?」

「よし。じゃあ、予定帝王切開ということで、急なんだけど来週でもいいかな? 
38週が望ましいところなんだ。」

「はい。大丈夫です。
宜しくお願いします。」
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