もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
1.もふもふ天国⁉︎
もふもふ、いいなあ。
食べちゃいたい。
ぼんやり見つめていた先に焦点を合わせると、今しがたマリーのヒーリング魔法で目を覚ました戦獣が眼と肩を揺らした。
大きい体に似合わない怯え方で、目を覚ましたばかりだというのに後退っている。
「マリーは相変わらずだな。なんていうか、報われない」
苦笑混じりの同僚が戦獣である大型イノシシの傍に立つと、あからさまに安堵した様子を見せる。
「先輩はいいですね。もふもふし放題で。顔、埋めちゃうんですか?」
先輩はマリーとイノシシを交互に見てから、ブハッと吹き出した。
「巨大イノシシにそんなことしたいのは、マリーくらいだよ」
「剛毛なイノシシにはさすがのわたしでも……たぶん」
戦に駆り出される獣は、勇ましい姿の種族が多い。
空からの攻撃を得意とするタカや大型のフクロウ。力の強いクマや、スピードのあるしなやかな黒ヒョウなど。
戦闘向きの獣は原種に近いものばかりで、目の前にいる大型イノシシも戦場では獰猛で攻撃的だ。
毛質だって硬いタワシみたいで、もふもふのふわふわには程遠い。
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