もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
案内されるまま進んだ先に、立派なテントが建てられていた。
テントの中央部にはホワイトライオンが左右に二頭、その真ん中に盾と王冠を挟む図柄。ユラニス王国の紋章だ。
もしかして、王家のテント⁉︎
「あ、あの。ここは王国の関係者の方のテントでは?」
平民のマリーが顔を出すには、場違いではないだろうか。
不安を滲ませて訴えたのに、どうやら通じないらしい。
「いいから、中へ入ってください。もちろんここで起きた出来事は他言無用でお願いします」
最後の一文に、ひえーっと心の中で悲鳴を上げる。
入るまで見守っていそうな男性の視線を感じ、震えそうになる手でテントの入り口部分を捲る。
自分には荷が重いと断れる雰囲気ではなく、渋々テントの中へと進む。
「この子は……」
中には幼いハスキー犬がふかふかのベッドの上で、丸まっていた。
もふもふでふかふかで、ふわふわだ。
動物にしては、かなりの高待遇。
高貴な人のペットかもかしれない。