もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
紫がかった深い紺色の髪は光を受け艶めき、髪の下から覗く瞳は澄み切ったブルーサファイアのように美しい。
その美しい瞳に今は不満を色濃く映し、マリーに鋭い視線を投げつけている。
けれど、マリーは真っ白な毛並みの聖獣に夢中だ。
「子どもの聖獣なんですね! だからこんなにも白くてふわふわなんだ〜」
聖獣は、王族のひとりひとりに必ず一匹仕える言わば相棒だ。
王国の紋章にもなっている白いライオンも、聖獣を表している。
体毛は白く、聖獣として力が強いほど、眩しい白色の体毛に包まれているのだ。
そして翼があるのも特徴のひとつ。
紋章のホワイトライオンにも、優美な翼が描かれている。
幼い幼獣には翼がまだ生えていないのか、体全てが柔らかくまん丸だ。
聖獣は強い魔力を持ち、王族の傍に従い守っているのだという。
ただ王族の人々自体が強大な魔力を持つ人物ばかりなので、守られていると言っても言い伝えや慣習みたいなものだろう。
「おい。聞いているのか」
あまりにも聖獣に夢中のマリーに、エリックは痺れを切らしたように呼びかける。
その後ろからクスクス笑う声がして、イーサンも部屋に入ってくるとおかしそうに言う。
「ユラニス王国の王子ともあろうお方が、なにを聖獣と張り合っているのですか?」