もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 軽く(けな)している発言に、空気がピリついたのがわかった。
 お陰でやっと忘れていた恐怖を思い出し、震え上がる。

 目の前で剣を抜かれて切り捨てられるとか、見たくないんですけど!

 鞘で脅された数時間前が頭に浮かび、心臓が縮む。

「イーサン。怯えさせて楽しんでいるのか。お前が殺されるのを、目の当たりにはしたくないだろう」

 血生臭い発言を聞き、サーッと血の気が引く。

 どこか余裕顔のイーサンを(たしな)め、頭を無理矢理にでも下げさせたい。

"わたくしめが血迷っておりました。どうぞ寛容な処罰を"って早く言ってくださいよ! お願いだから!

 頭の中では、ワーキャー騒いでいるのに、実際は池の鯉みたいに口をパクパク動かすばかりで声にならない。

「殿下も冗談が過ぎます」

 冗談なの?
 ブラックジョークにしては、真っ黒なんじゃない⁉︎
< 25 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop