もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
「いえ。私はひと言も、この子がエリック様の聖獣だと思うとは申しておりません」
どうにかこの場を切り抜けようと誤魔化してみても、後の祭り。
「それでは、わたくしの失言でした。あなたさまはご存じと思っておりましたので、エリック様の聖獣だとさきほど紹介してしまいました」
腰を深く折り、頭を下げるイーサンを恨めしく見つめる。
その隣で、エリックは冷ややかに告げる。
「茶番はいい。どうであろうと、知ってしまった以上、監視下に置く必要がある」
「か、監視下ですか? 私、誰にも喋りません!」
こんな冷たい眼差しに監視され続けたら、数日後にはカチコチの冷凍マリーになりそうだ。
鋭利な眼差しに心の奥底まで暴かれそうで、怯んだ足元はおぼつかず、よろめいて近くにあった調度品にお尻が当たってしまった。
「危ないっ」
頭を抱えるようにしゃがみこもうとするマリーを、エリックが力強く引き寄せる。
たくましい腕の中に包まれ、マリーのいた場所からパリーンッという不穏な音を聞く。
「これは大変だ」
イーサンは無惨に割れた高級そうな壺の残骸を見つめ、ため息をつく。