もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
不意にテントの外が慌ただしくなり、新しい患者が運び込まれたのかしらと思っていると、この場に不釣り合いなくらい高貴な雰囲気を漂わせた男性が顔を覗かせた。
「野戦病院のマリアがここにいると聞く」
先輩が私の方を見遣り、「マリーのことじゃないか?」という発言をしたせいで、男性の注目を一身に受ける。
「いえ。私はそんな大層な人間では……」
もう! 先輩の考えなし!
噂に尾鰭が付いただけで、私がマリア様と崇められるような人間じゃないって知ってるくせに!
現れた男性は軍服ではあるものの、どことなく優しげな顔つきでこの場に似合わない。
それでも急を要するのか、焦りの色が見える。
「四の五の言っている暇はありません。いいから来てください」
えっと、せめて、マリア様とは雲泥の差があるただの小娘だっていう、訂正だけはさせてくださいー!