もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

◇◇◇◇◇

 まだ田舎に住んでいた頃。

 学校までの道のりは、綿雲ヒツジがふわふわな体を揺らし柵の中で牧草を()んでいる姿を眺めながら歩くのが日課だった。
 いつもと変わらないのどかな風景を見つめ、マリーは恍惚な表情を浮かべた。

『あー。あのもふもふの群れの中にダイブできたら、死んでもいいなあ』

 そう夢見心地に言うマリーに、仲間たちは笑う。

『ダイブした途端、蜘蛛の子を散らすみたいに逃げられて、草原に顔面を強打させるのがオチ』

『そうそう。マリーの動物への愛は重すぎるんだよね』

 肩を竦め言われてしまい、反論する。

『受け取ってもらえないから、思いも募っていくの!』

『重すぎる愛が一方通行なのが、余計になあ』

『ねー』

 どうしてか、マリーは人一倍動物から避けられる体質だった。

『動物が好きなのに、どうして好かれないんだろうな』

 同情するような視線を向けられても、マリーだって知りたい。

『いいの。見ているだけで我慢』
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