もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 ふわふわの綿雲ヒツジたちを見ていると、それだけでうっとりする。

『あぁ! よだれ! 変態度合いが増してるッ!』

 仲間のひとりが呆れて声を上げても、マリーは素知らぬ顔で『じゅるり』とよだれをすする。

『羨ましいが過ぎて、大好物の料理を我慢してる風になってるから!』

 本当にかぶりついていかないように、引きずられながら動物から離されるのも何度目になるかわからない。

『ああー! もっと見たかったのにー!』

 小さな頃は、お昼寝のとき綿毛ウサギを抱っこしていないと眠れない子どもだった。

 お昼寝のお供に捕まると長時間離さないために、マリーから必死に(のが)れようとする綿毛ウサギと無邪気に追いかけるマリーとで、お昼寝前は運動会みたいに賑やかだった。

 回想していくと小さな頃は迷惑がられていたとはいえ、もふもふを堪能できていた。
 それがいつ頃からか、触れる距離に入る前に逃げられる始末。

『せっかくヒーリング魔法が得意だから、動物向けの病院に勤められると思ったのになあ』

 肩を落とし、もう何度目になるかわからない愚痴をこぼす。
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