保健室で、君と最後のキス
#2
取り残された辞書
「莉奈!大丈夫なの?」
教室に入った途端、勢いよく駆け寄ってくる芽衣。
「うん、だいぶ痛さも引いたから」
「いや、そうじゃなくて!」
何かのジェスチャーで知らせようとしているのか、目線を動かす芽衣。
目線の先を向くと、女子二人組がこそこそと話をしていた。
「日向くん葵先輩と付き合ったってほんと?」
「まじ信じられないんだけど〜」
あ…もう噂が回ってるんだ。
なんだか現実を突きつけられる。
「…まだちょっとキツいけど、大丈夫だよ」
八神くんのおかけでほんの少しだけ気が楽になったから。
「本当?辛いなら私の胸で泣いていいんだかんね!」
バッと両腕を広げる芽衣。
男らしい芽衣に少し笑みがこぼれる。
そうだ。私の周りは、こんなにもたくさん頼れる人がいるんだ。
まだ吹っ切ることは出来ないけれど、支えてくれる人がいると思うと、心が軽くなった気がした。