保健室で、君と最後のキス
「ほら、チャイム鳴っちゃうよ?」
早く帰った方がいいんじゃない?と、残り3分となる時計を指さしながら私を送り出そうとする八神くん。
「〜〜っ、い、行かないからねっ!」
私はそれだけを言い放し、勢いよく保健室を出ていった。
勝手にそんなこと決められても、私にだって拒否権くらいある。
絶対に行ってやらない。
そう心に決め、拳を強く握りながら教室までの廊下を歩く。
と、ふと握りしめた拳に違和感を感じた。
あれ?
私、結局辞書受け取ってない!?
最後の方は八神くんの発言に惑わされて、辞書のことを忘れていたのだ。
はぁ、とため息をつくと同時に、私のポケットからまたもやバイブ音が鳴る。
そしてスマホを見ると、LINEの通知が一件。
今度は八神くんからだった。
内容は、
『放課後辞書返すから必ず来てね^^』
とのこと。
…やられた、絶対にわざとだ。
そう言われたら、私は行かざるを得ないのだから。
今日の放課後、不安しかないけど、とりあえず集合場所に向かうしかない。
次何かあっても絶対に騙されない…。
私は決意を固め、スマホをポケットに入れた。