魔法使いは、恋の色に染まる

暗くなり始めた空を見上げて、私はため息をつく。

水色の空にかかるオレンジのグラデーション。綺麗だけど、どこか切ない。

「……」

私は耳にイヤフォンをはめて、昨日送られてきた音源を流した。明るい曲調だけど、切ない歌詞が耳に入ってくる。

……ここは、やっぱこうしようかな。

曲を聴いて、次々と浮かんでくる案。私はイラストレーターとして活躍しながら、学校に通ってるんだ。

今、私は作詞作曲をする仲のいい異性の友達からの依頼でMVを作ることになったんだ。

「……とりあえず、帰ったらすぐに絵コンテ作らないと」

そう呟いて、私はイヤフォンと携帯をカバンにしまう。代わりに黒い杖を取り出すと、森の近くにある私の家の前に立った。

杖をドアに向けて呪文を唱えると、ガチャりと鍵が開く音がする。私は、杖をカバンにしまうとドアを開いた。

「ただいま」

「おかえり」

私には、誰にも言ってない秘密があるんだ。それは……魔法使いだということ。

私のお父さんとお母さんは、もともとこの世界とは別の世界に住んでいたみたいなんだけど……ある日、転送魔法に巻き込まれたみたいで……。

今、2人は元の世界に帰るための方法を探してる最中。私はお母さんたちが住んでた世界で生まれたわけじゃないから、話を聞いてどんな世界か想像するだけしか出来ない。