魔法使いは、恋の色に染まる
圭介は、そう言って私の方を見ると微笑む。

「……ちょっとその魔法、使ってみて?」

「……良いよ」

私の言葉に、圭介は頷くと呪文を唱えた。次の瞬間、圭介の体がふわりと浮く。

「……それ、1回で使えたの?」

「え……?うん」

私の言葉が予想外だったのか、圭介は驚いた顔で私を見た。

「……圭介、私の家に来て」

「え……?」

地面に着地した圭介の腕を掴むと、私は家に向かって走り出した。



「……なるほどね」

お母さんとお父さんに事情を話すと、お母さんは何かを考え込む。

「圭介くん、初めまして……私は、絵美の母親で魔法使いです」

「魔法使い……?」

圭介に、お母さんは真実を話した。話終えると、圭介は「なるほど」と顎に手を乗せる。

「……昔、家にあった日記には……僕は、もともと……絵美の両親がいた世界で生まれて、『カミル』という名前を付けられていたみたいです……ある日、僕はこの世界に転送された……と書いてありました。僕が忘れないうちにここに記す、と書いてあったので、恐らく僕が書いたものだと思います」

……そっか。転送魔法でこの世界に来た人で、たまに向こうの世界にいた時の記憶を完全に忘れる人もいるんだっけ……?
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