私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!2~生存ルート目指したらなぜか聖女になってしまいそうな件~
ちなみに悪役令嬢イリスはどのルートでも殺されるか、死んだほうがましな最後を迎えることになっている。制作者の狂気を感じるゲームなのだ。

そんなゲームの中に、イリスは転生してしまったのだ。前世は日本人のアラサーOLだったゲームオタクのイリスは、やりこんでいたゲームの中に自分がいることに気がついて、恐れおののいた。ゲームとしては最高ではあったが、現実としては最低な世界だったからである。

そして、転生してからは自分の命を守るため、ヒロインのメリバを阻止し、ヒロインを『聖なる乙女』にするべく奮闘してきた。そんなイリスの努力が実り、昨年、ヒロインは無事に次代の『聖なる乙女』となったのだ。

今までいろいろあったわね……。妖精の長ソージュ様から祝福を受け、第二王子の婚約者になるなんて思いもしなかったわ。

ソージュはイリスを愛する妖精の長だ。この国には妖精の長と呼ばれる強力な魔力を持つ存在が七人いる。その中の一人、紫の長ソージュからイリスは祝福を受けているのだ。祝福とは、妖精が自分の気に入った人間に力を貸す契約をすることだ。祝福により、互いに魔力のやりとりがより簡単になるのだ。

妖精なんてゲームには出てこない存在だったからビックリよね。

イリスは小さく笑う。

去年まではゲームでストーリーを知っていたにもかかわらず、イレギュラーなことがたくさん起こった。ゲームではわからなかった世界を知るたびに心躍った。今年からは全く新しい未知なる世界が始まる。そう思うとイリスは期待で胸が高鳴るのだ。

春風がイリスのミントグリーンの巻き髪を柔らかく撫でる。揺れる巻き髪の中では、妖精の一人がウトウトとうたた寝をしている。つられてイリスも眠くなってしまう。手のひらで口元を隠し、あくびをつく。

そんなイリスの視界の中に、目の覚めるような赤い髪の少女が映りこんできた。
< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop