私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!2~生存ルート目指したらなぜか聖女になってしまいそうな件~
豊かな髪を高い位置でポニーテールにした女生徒だ。白い花吹雪の中で、燃える炎のような赤い瞳が激しく目立つ。私服登校を許されていることから、留学生だと一目でわかる。豊満な体つきを強調するように胸元が開いたドレス。くびれたウエストに、ハイヒール。自分の武器を熟知した堂々たるファッション。

背後には護衛の騎士が影のように寄り添っていた。

わぁぁぁ! まさにゲームの悪役令嬢って感じね。私よりずっと悪役令嬢っぽいわ!

イリスは驚いて目を見張る。

同時に、イリスの隣に一人の男子生徒が並んだ。

雨雲のような灰色の髪がフワフワとしている。曇天色の瞳は少し捉えどころのないような気もするが、ニコニコと微笑む姿は人当たりがよさそうだ。フワリとジャスミンの香りがする。

アヒルのような口は愛嬌があり、整った顔立ちからはゲームのメインキャラでもおかしくない気がするのだが、制服はモブ仕様である。

作画力の無駄使い……。制作陣! ここに力入れるなら悪役増やしても良くなかった?

イリスはひっそりと思う。

「彼女、すごいよね」

先ほど校門をくぐったばかりの赤い髪の女性を指さして、彼はあくびをしながら、馴れ馴れしい言葉使いで話しかけてきた。

「?」

イリスに気さくに話しかける生徒は多くない。まるで昔からの友人のような振る舞いにイリスは不思議に思った。イリスは冷たい悪役令嬢顔で人を寄せ付けないところがある。最近になり、女生徒とはお茶会などをするようになったが、男子生徒で仲がよいのは双子の弟ニジェルと、婚約予定の第二王子レゼダぐらいだからだ。

イリスは同級生をすべて覚えていたはずだった。王子妃候補者としてたたき込まれたのだ。そして、彼も見覚えがある。それなのに、違和感がある。眉の間がモヤモヤとする。眠気を抑えて無理やり起きているような変な怠さだ。

うーん……。誰だろう。どこかで……。ああ! メガーヌさんと一緒にいた人だ。でも名前が出てこない……。入学時適性検査のことも覚えてない……。
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