秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
『お前の会社倒産したんだろ? 親父には次の仕事はもう決まっているようなことを言ったようだが、どこに就職したんだ?』
 兄の話を聞いて青ざめた私。
 会社の倒産のことをニュースで知って連絡してきた両親には、『コネがあって次の仕事は決まってるから』と伝えていた。もちろん次の仕事が決まっているというのは、真っ赤な嘘だ。
『そ、それは……給料のいいとこ』
 動揺しながら言い繕うも兄をごまかすことはできず、『まだ仕事決まってないんだな? 会わなければ、お前が無職であることを親父に報告する』と脅された。
 ホント、人の弱味につけ込むなんて嫌な兄だ。
 私になんの話があるというのだろう。なにか厄介な頼みごととか?
 ちょっと嫌な予感がしたけどマレーシアでのんびりと隠遁生活を送っている両親を心配させたくなくて、仕方なく会うことにした。
 兄の法律事務所の近くのカフェで待ち合わせたのだが、そこに兄となぜか神崎さんもいた。
 兄は顔のパーツは私と同じで鋭角的な顔立ちをしている。背も神崎さんくらいで、髪は漆黒のウルフヘア。歳は三十一歳で結婚はしていない。
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