秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
妻という名の奴隷になりたくない。
 踵を返して立ち去ろうとしたら、運悪く神崎さんと目が合ってしまった。
『紗和ちゃん、久しぶりだね』
 あちゃー、これは逃げられない。
『……ご無沙汰してます』
 顔を引きつらせながら挨拶を返してふたりのいる席に行き、兄の隣に腰かけた。
『お前、三分遅刻。時間はちゃんと守れよ』
 会って早々文句を言う兄にムッとしながら言い返した。
『電車が人身事故で遅れたの。で、話ってなに? どうして神崎さんまでいるの?』
 早く帰りたくて用件を聞くと、兄はクールにコーヒーを口にしながら返した。
『お前まだ仕事決まってないんだろう? 総司の頼みを聞くなら、うちの事務所で雇ってやってもいい』
『まだ見つかっていないけど……頼みって?』
 ボランティア精神の欠片もない兄が神崎さんのために動くのは昔からの親友というのもあるが、神崎さんの会社の顧問弁護士をしているせいだろう。
 兄に聞き返したら、神崎さんが答えた。
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