ごめん、好き。

掴まれた手をスッと引かれ、思わず顔を上げると手の甲に彼の唇が触れた。


「っ……!!」

その瞬間、顔が熱くなるのがわかった。


彼がフッと笑って顔を俯かせる。


「もう、手遅れですね」

「え……?」


次に顔を上げた彼の瞳の奥が妖しく光り、私を捉える。


「俺があなたを欲している」

「っん」


さっきまでと違う彼の低めの声が、頭の中でこだまする。


このトーンがきっと彼の素の声。


“僕”から“俺”に変わったところが何よりの証拠で。



「や……めて、くださいっ……!」

そのせいで抵抗するのが遅くなった。


ドンッと力いっぱい彼を押して、重なった唇を離す。



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