幸せになりたい神様を拾いました


「・・・佐智、己の心に従え。」

私を抱き締めて髪を撫でるその手は、本当に愛しい存在を抱くような温かさと慈しみ。

諭して、あやして、包み込む優しさ。

「・・・人間は、大変なんだよ・・・イザナギ・・・」

「・・・そうだな・・・それが、人の子として産まれた修業だからな・・・」

「・・・やめたくなるよ・・・」

「やめられるぞ。だが、終わらないで投げ出した宿題は、次回へ持ち越しだ。それがいいか、今己の為に修業をするか、どちらがいい?それを選ぶのもまた人の子、佐智自身だ。」


重い・・・少しだけ吐いた弱音への返答が重い・・・

でも、胸に刺さる。


抱き締めて身体を揺らし、頭上から降るイザナギの言葉は深くて温かかった。

「・・・イザナギ、なんで触れるの?」

「あぁ、佐智とは契約を結んだからな。他の者には俺は見えぬが、佐智は元からの能力もある上、俺との縁で結ばれた。故に触れられる。」

「ふぅん・・・」

「・・・興味なさそうだな。眠いのか?」

「・・・見える、ものは見える・・・触れるのは触れる・・・眠い・・・」

「ふ・・・眠れ、人の子・・・」

イザナギが触れた額が温かくて、私の瞼は自然と降りてくる。

その温もりと安心感の中で、私はいつぶりかわからない程久しぶりに深い眠りへと落ちていった。


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