幸せになりたい神様を拾いました



「・・・いるのかな・・・そんな人・・・」


「・・・・・・いるとも。」


頭に触れるイザナギの手が温かい。


「・・・人間に対して諦めている所があるお主は、こちら側(・・・・)の居心地の良さを知れば、安易にこちら寄りになってしまうだろう。しかし、肉体を持つ人の子は、人間の中にいるべきだ。安心して、この手を渡せる良き男子と巡り逢うよう俺も力を尽くそう。」


私の手を取り、ギュッと握るイザナギの手から流れ込む温かいエネルギーは、不安が生まれそうになる私の心に染み入り、熱を広げて暗い淀みを消し去ってくれる。


「それにお主、俺に恋なぞするなよ?するだけ無駄だからな。」


「なッ・・・わかってるよ、自分には奥さんがいるからって・・・」


突き放されたようにズキンと胸が痛み、温まった心が急激に冷えていく。

突然すぎて泣きそうになったのを知られたくなくて、私は頭に乗るイザナギの手から逃れた。


「ばかもの、そうではない。人の子から神への思い、神から人の子への思いは相思相愛だからだ。お主が俺をどう思おうが、俺と繋がった(えにし)は恋だのなんだのという一時の感情よりも深く、永久(とわ)に消えはせん。それが神というものだ。人の子は愛おしい。恋なんぞしなくても、安心して俺を好いていればよい。」


逃れた手は、何の躊躇いもなく再び頭に乗せられ、グリグリと撫で回して、ポンポンと頭を叩いた。
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