幸せになりたい神様を拾いました
「じゃあ、あの日イザナギがあそこにいたのは?」
「たまたま、あの場所に設置された。佐智が1万円を投入するまで、俺は眠っていたからな。目覚めた時にはお主が何やら虚ろな目で、寿司やらステーキやら、温泉やらと呟いておった。」
可笑しそうに、懐かしそうにイザナギは笑っている。
「・・・なんか、私、ずっと前からイザナギの事知ってる気がする・・・」
横を歩くイザナギを見つめて呟けば、
「・・・・・・言っただろう?俺も、イザナミも、お主の中にずっといると。この国におわす八百万の神たちは、お主の中にもちゃんと、息づいておるのだ。だから安心して命を生きて行くがよい。」
わかったか?、と笑って、やっぱりまた、イザナギは私の頭をワシャワシャと撫で回した。
「そうだ佐智、俺に叶えてほしい願いを考えておけよ。」
「う~ん、願い事かぁ・・・うん、考えておくね。」
なんだろう・・・願い事かぁ・・・
改めて考えると思いつかないな・・・
また今度考えよう、と一旦頭の中で保留にして、私とイザナギはお店の中をウロウロしたが、その日はイザナミと会う事は出来なかった。
イザナギはガッカリしているかな、と思ったら、案外そうでもなく、どちらかと言えはほっとした様子で、「そう簡単にはいくまい、ゆっくり探すとしよう」と、チビチビと日本酒を味わいながら、私のカシューナッツをつまんでいた。