幸せになりたい神様を拾いました
~side イザナギ~
琴原 佐智。
さち、という名を持つこの人の子は、生まれながらに幸の薄い宿命を背負っている。
肉親との縁も薄い。
人の世で言う事件によって母親も失っている佐智は、見える能力がマイナスに働き、人の世では随分と生き辛い事であっただろう。
ガチャガチャ等という玩具でこの町にたまたま設置されたと佐智には言ったが、俺は、佐智が幼い頃から知っている。
この国、この土地の、イザナギに由来する土地に残る<イザナギ>としてのエネルギーや思念は、離れた場所でも共通の記憶として更新されていく為、佐智の記憶の中の、桜の大樹の下にいた男女というのは、遥か昔、その場所にいた、その時代の『イザナギとイザナミ』だ。
あの時の人の子はどうしているだろうか。
しばらく見ていないな、健やかに生きているだろうか。
そう思っていた俺がいたのだ。
その感情が作用したのかどうか、神である俺でもわからないが、俺は佐智がいるこの町で佐智が通りかかるのを待った。
話してみれば、懐かしい面影のある少女は成長し成人した女性になっていたが、相変わらず陰のある幸の薄い人生を送っていた。
それに、母の命をも奪った、『死神』にも魅入られている始末。
死神に魅入られたら、生まれ持った宿命とは別に、都合よく命を刈り取られてしまう事もある。
だから俺は、早々に佐智と契約を結び、縁という守護を与えた。