幸せになりたい神様を拾いました
「俺は妻のイザナミを失った。失う事は悲しいが、別れというものは存在し、それを乗り越えなければいけない。しかし、俺は理を侵し、死んだ妻を黄泉へ迎えに行った。だがそれはイザナミを傷つけ、取り戻す事も出来ずに終わってしまった・・・。長い時を1人で過ごし、数え切れぬ年月を見送り、それでも俺はイザナミが恋しい・・・。俺は、イザナミを探している。どうか、力を貸してはくれぬだろうか、人間の娘よ。」
ベッドに座り胡坐をかいたイザナギが頭を下げる。
力をって言われても・・・私はただの人間で、神様にお願いをされるような・・・
「そんな事はないぞ」
「え」
「人間はすぐに、「私なんか」、などと言う。特に日本人、我が国の民に多いな。」
「・・・それは・・・謙遜もあるんじゃ・・・」
「いや、違う。不必要に己を卑下し、貶める言い方をする必要等ないという事だ。己の持つ能力、努力した結果、得てきた経験、持って生まれた性質、魂の美しさ。誇れるものは数多くあり、それは誰しもが持つ光だ。美しさ、輝く力だ。ただの人間、何も出来ない、そんな事は万に1つとしてない。それが、私とイザナミが造りし国の民だ。八百万の神たちが守りし国の民だ。堂々と生きろ。私は誇りに思っている。」
「・・・」
「・・・ふ・・・どうした、なぜ泣く」
「・・・だって・・・そんなの・・・」
「おかしいか?俺は嘘はつかぬ。誰もが愛しい我が子と同じよ。」
だって・・・涙は勝手に流れるし、この人間離れした姿のイザナギの言葉が本当に神様の言葉のように思えて、私は流れる涙を止める事が出来なかった。