幸せになりたい神様を拾いました


「おいで、人の娘。」

私の手を取ったイザナギが自分の座る横に私を導き、腰を下ろした私の両手を自分の手で包み込んだ。

「・・・冷えているな・・・もっと、己を愛してやるといい。どんな人間より、どんな神より己に近い者、それは自分自身だ。己と向き合い、対話をし、己を愛せ。それは巡り巡り、他者からも愛される事に繋がっていくはずだ。」

包み込んだ手をさすりながら、イザナギはその美しい顔を私に近づけ、額と額を合わせた。


「・・・イザナギ・・・」

「ん?」

「・・・ふふ・・・イザナギ、神様みたいだね」

「・・・ばかもの、俺は神様だと最初から言うておるわ、元、だがな。」


そう言って笑うイザナギの手はとても温かくて、涙はいつの間にか止まっていた。

人間ではない、自分を神様だという、態度がデカくて少し横柄なこの男の言葉が、関わってきたどんな人達の言葉よりも心に深く染みわたり、お腹の辺りが温かくなった気がした。


「人の子、名は何と言う。」

「・・・琴原佐智(ことはらさち)

「佐智・・・お主に俺の力を貸そう。守護の守りがあれば、先のような低級霊や魔は近寄らぬ。身を守る事が出来よう。あと・・・」

「!イザナ、ギ・・・」

触れた額が熱くなり、イザナギから熱いものが流れ込むのがわかる。

額を離したイザナギの手が私の胸に触れ、思わず動揺して声を大きくすると、

「佐智、静かに」

制する声に私は静かにイザナギの行動を見守るしかなかった。
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