それでも、精いっぱい恋をした。


そんなわけで駐車場にレッドボーイを停車させる。


「おにぎり屋…?」

「そ。ここいろんな具があるし米もめちゃくちゃうまいから」


行こう、と中に押し込む。入るとすぐに名物のからあげのにおいがするの、本当に大好き。

クラスメイトとともに行きつけのおにぎり屋さん。一番奥のいつもの席に座る。


「これメニュー」

「…」

「もしかしておなか空いてない、すか?」

「いや…すいてる」

「よかった。おごるからいっぱい食べてくださいね」


メニューを受け取ってくれた。順番にじっくりと見ていく目。文字が似合うひとだなあと、ぼんやり思う。


「決まった?」

「…そっちは?」

「わたしはだいたいいつも、ゴマドレサラダにぎりと角煮と明太子玉子焼きです」

「3つも食べるの?」

「これくらいなのでいけますよ」


手でまるをつくると納得したみたいで、彼はからあげにぎりと葉唐辛子としらすを頼んでいた。

お味噌汁とたくわんもついてきて、にぎりめし3つで500円。安い。ふたりで1000円。そう伝えると「やす」とおどろいてるのかよくわからないけどたぶんおどろいている声でつぶやく。


「バイク、何事もなくてよかったね」

「……」


いいひとだな、本当に。付き合わせたのに。


「そういえば、どっか行く予定とかじゃなかったですか」


家に帰るだけだったならいいんだけど…。


「あー…塾だった」

「へ…ええっ!?ご、ごめん!」


たいへんだ。お礼しなくちゃ、という思いが先走って予定も聞かずに連れてきちゃった。サーっと身体が冷えていく。

慌てて立ち上がろうとしたら腕を掴まれた。

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