それでも、精いっぱい恋をした。



「まあ、行くのやめようと思ってたからへいき」


さらりと、なんてことないみたいに言う。

わたしからしたらワンコイン料理よりびっくりだ。


「サボろうとしてた…ってこと?」

「うん」


…付属高校のひとでもサボったりするんだな。

塾って行ったことないからわかんねえけど、サボって大丈夫なのかな。


「あ、うまい」


からあげのおのぎりをひと口食べて彼が言う。


「それここの名物」

「そうだったんだ。…そっちのゴマドレサラダってどうなの」


ちょっといやそうな顔をされる。むむむ。


「すげーおいしいから食べてみ?」


ちょっとかじっちゃったけどいいかな。かじってないところを向けてあげる。とにかくおいしいから食べてほしい。偏見ってよくない。

するとひんやりと冷たいひとさし指と親指が、手首にくるっっと巻き付いた。


ひと口。わたしがかじったところより少しだけ大きく含まれたゴマドレサラダ。


「…あ、本当だ。ごぼうがいい感じ」


う……かっこいい。

別れた彼女、もったいねー。


「そ、そうだろ?つーかひと口大きくね!?」

「敬語取れたら言葉汚いな」

「な…うるせえよっ」


いつの間にかボロが出てた。

でも笑ってる。バカにしたような感じじゃなくて、良い感じに。

そのあともにぎりめしをしきりに褒めながら食べてくれて、わたしが作ったわけじゃないのにうれしくなった。

< 12 / 148 >

この作品をシェア

pagetop