それでも、精いっぱい恋をした。
だんだんと速度も落ちている。店までまだ半分も近づいてない。
道端の公園にある時計塔を見ると20分経過していた。うそだろ?このままじゃ日が暮れるんじゃね?
仕方ねえ…クラスメイトを誰か召喚するか、と携帯をポケットから出そうとしたら滑って落としてしまった。
うおお…画面からいった。携帯死んでないよな?つーか、どうやって取ろう。
身とバイクを傾けて地面にぐいーっと手を伸ばしてみたけど届かない。しんどい。重い。
「スタンド下ろせば」
どうしようか、と悩んでいると後ろから低い声が聴こえた。おお…スタンド…!その手があった。
言われたとおりバイクのスタンドを下ろしてその場で止め携帯を拾う。よかった、割れてない。
「あの、ありがとうございます」
「べつに」
そっけなく返ってくる言葉。つーかあれか、わたしとレッドボーイが邪魔で通れないのか。申し訳なくてぺこぺこしながら端に寄ろうとレッドボーイを担ごうとしたけど絶対に無理。
ハンドルを掴んで方向を変えようとしたら、別の手がそこを握った。
レッドボーイが見知らぬ男の子に連れ去られていく…のを呆然と眺めていると茶色い髪が揺れる。
「行かないの?」
振り向いた彼が問いかけてくる。
「え…」
「走らないからこの通りにある修理屋に持ってくんだろ?そのままのペースじゃ日が暮れるし危ない」
「…もしかして、持ってってくれるんですか?」
「うん」
神?めちゃくちゃ良いひとじゃねえかよ。