それでも、精いっぱい恋をした。


進んでいっちゃうから隣に駆け寄る。背が高いなあ。細い。つーか、イケメンじゃね……?助けてもらったからそう見えるだけ?…って、制服、あの私立で付属の進学校のじゃねえか。げ。


市内どころか県内トップクラス。成績も、希望家柄も超エリートが集まってるらしい。

小等部から大学までエスカレーターで進む人が基本。外部受験者もいるみたいだけど。


うちの学校と違って学校ブランドがあるからなんでもし放題。文武両道と自由な校風を掲げ、勉強してりゃ何しても文句を言われない学校だって聞く。

きっとこいつの頭は染めてるんだ。いいなあ。わたしなんて海苔みたいな黒髪地毛だよ。


ご近所だけど頭の出来は雲泥の差。野球部は万年この学校に転覆され、けんかして退学になったクラスメイトはこの学校のやつらに街中でバカにされたらしい。


そういうのもあって苦手だ、と思っていたけど…こいつはたぶん、良いひと。

そっけないけど、でも、ふつう老人でもないのに手伝わないだろ。



「あの、何年生ですか?」


黙って歩くのもなんだか気まずいので話しかけてみる。


「高2」

「へえ、同じだ」


そう返すと開いた目がこっちを向いた。


「え、働いてるのかと思ってた」


どっちかといえば童顔に見えるって言われることが多いんだけど…あ、作業着だからか。


「これ学校の実習着なんです」

「実習着?」

「そこの工業高校の…」

「ああ」


ああって、どの「ああ」なんだろう。


感情の読めないポーカーフェイス。お高く気取ってる様子はなく、むしろぼうっとしてる感じ。うん。バカにはされてないっぽい。

なんかしゃべろう、と思うのに、話がつまんなかったらどうしようかと思って言葉が出てこない。

< 7 / 148 >

この作品をシェア

pagetop