それでも、精いっぱい恋をした。
手伝ってもらうの断ればよかったかな…時間をもらってしまって申し訳ない。
「あ。危ないよ」
「え……わ、っ」
何が、と思う前に腕を引かれる。すると横をすれすれで自転車が通り過ぎてった。
「…ありがと、う、ございます」
危ねー。腕引っ張ってもらわなかったら迷惑かかってた。
彼はすぐに手を離し、また悠々と歩いてく。
「…男の子ってすごいな。レッドボーイ片手で持てちゃうんだ」
「レッドボーイ?」
「あ、その子の名前…」
「え、ださ」
ださい!?
戦隊モノはレッドが真ん中で一番強い。
そんな由来の名前を…ちょっとイケメンだからって、かなり頭が良いからって…ちくしょう。文句を言ってやりたいけど手伝ってもらってしまってる。
衝撃的な言葉に絶句するわたしを見て、彼は軽やかに笑った。
「こいつ男なんだね」
腕から離れた広い手のひらが赤い愛車をそっと撫でる。
優しい手つきに思わず、ぐっときてしまった。
クールなひとなのかと思ったらけっこう笑うときはくしゃって顔になるし…さらっと助けてくれたし…さてはモテるな。
「あの、きみ、わたしとふたりで歩いてて大丈夫ですか」
「なにが」
「その…彼女とかに見られたらまずくないですか。あ、もし問題になったら勘違いだって言いにいくので!」
見立てだと女の子にスーパー慣れてる。なんせ手助けが手慣れている。
しかも高身長イケメン。5組の美少女マナをはじめ、早優、佳菜が見たらきゃっきゃすると思う。まあわたし以外彼氏いるんだけどな。