5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
プロローグ
「はぁ……疲れた」
 寝不足と長時間労働でぼろぼろになった体を引きずりながら、大きなため息とともに呟く。私は人生であと何回、この言葉を言うのだろうか。

 私、神山芽衣子の家は貧乏だ。両親は私ひとりを育てるために、いつも必死で働いていた。しかし、それでも生活は常にギリギリだった。
 そんな両親を見かねた私は、高校生になるとすぐにアルバイトを始めた。朝は新聞配達してから学校に向かい、学校が終われば賄の出る飲食店で働いた。
 もちろん大学に進学できる余裕などなく、高校卒業後は就職することに決めた。やっとの思いで受かった企業は、蓋を開けたらまさかの超がつくほどのブラック企業……。だけど、お金のことを考えると、やめることなんて選択肢は頭になかった。
 毎日朝から終電まで働き、小さなミスがあれば上司に怒鳴られる。見て見ぬふりをしていたストレスは、確実に私の心身ともに蝕んでいく。

 ――ああ、なんで私って、こんなに働いてるんだろう。

 日付が変わり、二十歳の誕生日を迎えた。記念すべき瞬間に、こんな弱音が最初に出てくるなんて……。
 星ひとつない真っ暗な空を見上げ、誰もいない夜道を歩きながら、自分のこれまでを振り返ってみる。……どれだけ過去を振り返っても、楽しかったことが思い浮かばない。
 幼い頃、家に帰っても両親はいない。学生の頃、アルバイトばかりしていたせいで、放課後友達と遊んだことがない。そして社会人になった今、待っていたのは以前よりも自由のない地獄の日々。一体いつまで、こんな毎日が続くのだろう。
 そんなことを考えていると、急に目の前がぐるぐると回りだした。ものすごい眩暈がし、私はその場に膝をついて倒れこむ。
 コンクリートの地面はひんやりと冷たくて、なんだか気持ちいい。
 そんなのんきなことを考えているうちに、私は意識を手放した。
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