5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
 次に目が覚めると、土と草の匂いが私の鼻を掠めた。いつのまにか、私は草むらの中で寝そべっていた。
 むくりと上半身だけを起こし、周りを見渡してみる。ここは……森の中? どうしてこんな場所にいるのだろうか。わけがわからない。
 かなり混乱しているが、こういうときこそ冷静な状況判断が大事だ。まずは、周辺を探ってみよう。
 そう思い立ち上がってみると――なんだこれは。びっくりするほど目線が低い。私、こんなに背が低かったっけ? 
 違和感を感じ、私は自分の両手を目の前にかざしてみる。

 ……ち、小さい! まるで幼児の手だわ!

 いや、小さいのは手だけじゃない。この目線の低さからして、身長もだいぶ低いし、足のサイズだって……。

 もしかして私、子供に戻っちゃったの!?

 恐る恐る、近くにあった水たまりを覗き込んでみる。そこに映っていたのは、今までとはまったく違う自分の姿だった。それを見て、私は確信する。
 ――私、前世とは別の世界の人間……しかも幼女に転生したみたい。
 つまり、前世の私、〝神山芽衣子〟という人間は、あのコンクリートの上で、あのまま死んでしまったということか。死因は過労以外思い当たらない。実際どうだったかは知る由もないが、あの若さで過労死だったとしたら、我ながらかわいそうすぎて死んでも死にきれない。
 ……あ、だからこうして前世の記憶を持ったまま転生することができたのかな。神様が同情してくれたのかも。
 ここがどういった世界かはまだわからない。だけど――。

 今度の人生は、最低限しか働かず、ゆったりとしたスローライフを絶対実現してみせる!
 森に吹く優しい風を肌で感じ、澄み渡る青空を見上げながら、私は強くそう思ったのだった。
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