5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
「魔獣さんの名前は、〝スモア〟! どうかな?」
スモア。私が感動して大好きになったお菓子の名前を、魔獣に命名することにした。
【スモアか。うん。いい名前だ。オレは今日からメイの従魔、スモアとして生きていこう】
「気に入ってくれてよかった! これからよろしくね! スモア!」
思い切りスモアに飛びつくと、またスモアが頬ずりしてくる。ヒゲがくすぐったいが、それすらも心地いい。スモアも喜んでいるのか、ゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえた。
「俺の声も聞こえるのかな? スモア、俺はフレディだ。メイのいちばんの相棒で、剣士だ。よろしく――って、あれ?」
じゃれ合う私たちに近づき、フレディがスモアに挨拶をすると、スモアはキッとフレディを睨みつけた。
「……メイ、俺、なにかしたか?」
【ふん! メイのいちばんの相棒を名乗る器ではない。メイには俺がついている】
「メイのいちばんの相棒を名乗る器じゃない、って」
「プッ!」
スモアが言ったことを復唱すると、マレユスさんが噴き出した。
「どいつもこいつもみてろよ……。俺がメイにとってのヒーローだってことを、いつかわからせてやる……!」
フレディは固く拳を握りながら、なにかを決心したようだった。
【さあ、日が暮れる前に洞窟から出るぞ。夜になると、ここは急激に冷え込むからな。メイのことはオレが暖められるが、あとのふたりは凍死してしまうぞ】
「それは困る! じゃあみんなで仲良くギルドに戻ろっか!」
「そうですね。依頼はなんとかこなせましたし。報酬が楽しみです」
「グレッグたちがしたことも、マスターに報告しないといけないな」
ここに来るまでで散々疲れたが、ギルドに戻ってもやることはたくさんだ。私たちが全員無事で、しかもスモアまで連れて戻ってきた事実を知ったら、グレッグはどんな顔をするだろうか。
グレッグのしたことは許せない。マスターに説明して、それ相応の処分を受けてもらわないと!
私たちは来た道を戻り、ギルドへ戻ることにした。
町へ着いた瞬間から、みんなスモアを見てぎょっとした顔をしている。
そりゃあそうか。魔獣が堂々と道の真ん中を、人間と歩いているんだもの。
「メイちゃん、そのホワイトタイガーは……?」
仲の良い商人が偶然通りかかり、恐る恐る私に話しかけてきた。
「北の洞窟にいた魔獣さん! 今日から私の従魔になったの! スモアっていうんだよ。かっこいいでしょ?」
「えっ! メイちゃんの従魔に!? すごいなぁ! こんな大きな魔獣を手なずけるなんて……」
「スモアは危害を加えたりしないから、怖がらないで大丈夫だよ。ねっ? スモア」
私がスモアの頭を撫でながら言うと、スモアは尻尾を振りながら頷いた。
私と商人の会話を聞いて、今まで遠巻きに見ていた町の住人がちょっとずつ私たちのほうへ近寄ってくる。みんなスモアに興味津々みたいだ。スモアもこれから、この町に馴染んでいけるといいなぁ。
「マスターに今回の依頼についていろいろ報告があるんだが、執務室へ通してもらえるか確認してもらっていいかな?」
ギルドに戻ると、フレディが受付嬢に言った。受付嬢の視線はスモアに釘付けになっていたが、我に返るとバタバタと奥の部屋へと走って行った。
マスターの許可が出たようで、私たちは執務室へと通される。
「無事解決してくれたようだな! よくやった! 怪我はないか!?」
受付嬢に私たちが依頼をこなせたことを聞いたのか、部屋に入るなりマスターが笑顔で出迎えてくれた。
「はい! 全員大丈夫です!」
「おおそうかメイちゃん! 魔獣に攻撃されたりしなかったか?」
「はい! スモアはとってもいい魔獣でした!」
「すもあ?」
マスターが首を傾げると、スモアがフレディとマレユスさんの間から姿を現した。
「き、北の洞窟の魔獣!?」
驚き後ろに後ずさるマスター。受付嬢、スモアが一緒にいることはマスターに言っていなかったのね……。
私はマスターに、スモアが従魔になったいきさつを説明した。
「メイちゃんにテイム能力があったとは。お前たちは知っていたのか?」
フレディとマレユスさんは、マスターからの問いかけに同時に首を振った。
私が持ってた特殊能力というのは、テイム能力というらしい。
「メイちゃんにはいつも驚かされっぱなしだな! ギルドにテイマーは多くないし、こんな魔獣を従えているのは、うちのギルドではメイちゃんだけだ。これからもよろしく頼むよ」
「任せてください。スモアと一緒にがんばります!」
これからはさらに依頼が増えそうだ。お金を稼ぐスピードも今までより早くなりそう。夢が叶うのは、そんなに先じゃないかも!
あ、でも冒険者をやめたらスモアは私についてきてくれないかな……。できればスモアも一緒に来てほしいけど……。もふもふとスローライフなんて、想像しただけで顔がにやけるもの。一応その時がきたら、スモアの意思を確認してみよう。
「マスター。これは大事な話なんだが、今回の事件には黒幕がいたんだ」
私が未来のことを考えていると、フレディが一歩前に出てマスターにそう言った。そうだ。早くグレッグたちのやったことをマスターに報告しないと。
「黒幕? くわしく教えてくれ」
マスターの表情が険しくなる。
そして、スモアが暴れたり(実際には痛みに苦しんでいただけ)、コボルトが大量発生したのはグレッグたちの仕業だということを話した。私とフレディが気にくわなくて、仕返しするためだったということも。
「……あいつは強くて、勇敢さもある。気性は荒いが、将来は立派な剣士になると思っていた。だが、どうやらここまでのようだな。私情で人間と魔獣の約束を破るなんて、許されることではない」
スモアが私の隣で、そう語るマスターのことをじっと見つめている。
「お前たちには迷惑をかけたな。報酬などの件は後日話す。すまないが、俺は今すぐグレッグと話をつけてくる」
マスターはそう言って、早足で執務室から出て行った。
その時、ちょうど入れ違いで執務室にミランダさんがやって来た。
「ミランダさん!」
「メイちゃん、こんにちは。遊びに来たら受付嬢にここにいるって聞いて、勝手にきちゃった。あ、おふたりもこんにちは」
てへ、と舌を出すミランダさんは、今日も女神のように美しい。フレディとマレユスさんは、特に返事もせず軽く頭を下げるだけだ。美女を前に緊張してしまうのは、ふたりとも同じらしい。
「あら、この子は?」
ミランダさんがスモアを見てそう言った。
「スモア。私の従魔なの」
「従魔ですって? メイちゃん、聖女以外にもいろんなことができるのね! 羨ましいわ。私はほかになんにもできないもの」
そのひとつの能力で最強にまで上り詰めているのだから、ミランダさんはじゅうぶんすごい人だと思う。
「スモア、私はミランダっていうの。メイちゃんのお友達よ。どうぞよろしくね」
その場にしゃがみ込み、スモアに自己紹介をするミランダさん。スモアは返事の代わりにか、ふんっと大きく鼻を鳴らした。
「あ、そういえばギルドでなにかあったの? マスター、怒ってるように見えたけど」
「あぁー……。グレッグがやらかしちゃったから。マスターが直接話をつけにいくみたい」
ミランダさんに、かつての仲間であるグレッグたちの話をするのは少々気が引ける。マスターのあの様子を見ると、大きな処分を受けるのは間違いないだろうし。
「彼とその仲間は、間違いなくギルド追放でしょうね」
「追放? ……なにをしたの?」
詳細を話すのをためらっていたのに、突然マレユスさんがそんなことを言い出したせいで、ミランダさんに話さざるを得ない状況になってしまった。
フレディが代表してミランダさんに事情を説明する。話を聞き終えると、ミランダさんは立ち上がり、ぎゅっと拳を強く握った。
「なにやってるのよ。あの馬鹿……!」
そう言うミランダさんは、いつもと雰囲気が違い驚いた。そしてマスターの後を追うように、ミランダさんは来たばかりの執務室を後にした。
……ミランダさん、なんだかんだ言いながらもグレッグのことが気になるのかな。仲間だったわけだし、追放ってなると放っておけないのかも。執務室には私たちと、ミランダさんの甘い香りだけが残った。
すると、私のお腹が突然ぐぅぅ~っと音を立てた。
「ごめん。いっぱい動いたからか、お腹すいちゃった」
気の抜けた音のおかげで、ピリついた空間が途端に和やかになる。
「はは。そうだな。家に帰ってゆっくりご飯でも食べようか」
「そのご飯、作るのは私だけどね。フレディなんにもできないから。この前も目玉焼きを焦がしちゃったし」
「!? あなた、メイにご飯を作らせているのですか? 聞き捨てなりませんね。メイの手伝いもかねて僕もお邪魔します」
「ただメイの料理が食べたいだけだろ」
「なにか仰いました?」
ああ。またふたりの口げんかが始まった――と思ったら、なぜかスモアまでフレディを威嚇している。スモアまでこのくだらない言い争いに参加したら、収集がつかなくなるじゃない。
「スモア、なんだか俺にだけ当たりが強くないか?」
「あなたがいつも、メイのいちばんの理解者ヅラをしているからですよ。スモアとは気が合いそうです」
マレユスさんが言うと、スモアが大きく頷いた。
「あ、スモアは私の従魔だから、家ももちろん一緒だよね?」
【もちろんだ。どこに行く時も、メイが嫌がらない限りは一緒にいる】
嫌がるだなんてとんでもない。屋根裏部屋に、ギリギリスモアも一緒に眠れるかな。スモアのもふもふと眠りにつけたら、さぞかし気持ちよさそうだ。
「ということで、今日からスモアも一緒にフレディのお家にお世話になりますっ。いいよね?」
「……そうだな。いいぞ。スモアはメイの従魔だからな。」
若干間があったのは気になるけれど、フレディからのお許しがもらえた。
「じゃあ、食材を買って帰ろう!」
今日はマレユスさんもスモアもいるから、いつもより多めに買わなくちゃ。報酬は期待できそうだし、今日くらい奮発しちゃおう。
賑やかになりそうな食卓を楽しみにしながら、私たちは帰路についた。
スモア。私が感動して大好きになったお菓子の名前を、魔獣に命名することにした。
【スモアか。うん。いい名前だ。オレは今日からメイの従魔、スモアとして生きていこう】
「気に入ってくれてよかった! これからよろしくね! スモア!」
思い切りスモアに飛びつくと、またスモアが頬ずりしてくる。ヒゲがくすぐったいが、それすらも心地いい。スモアも喜んでいるのか、ゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえた。
「俺の声も聞こえるのかな? スモア、俺はフレディだ。メイのいちばんの相棒で、剣士だ。よろしく――って、あれ?」
じゃれ合う私たちに近づき、フレディがスモアに挨拶をすると、スモアはキッとフレディを睨みつけた。
「……メイ、俺、なにかしたか?」
【ふん! メイのいちばんの相棒を名乗る器ではない。メイには俺がついている】
「メイのいちばんの相棒を名乗る器じゃない、って」
「プッ!」
スモアが言ったことを復唱すると、マレユスさんが噴き出した。
「どいつもこいつもみてろよ……。俺がメイにとってのヒーローだってことを、いつかわからせてやる……!」
フレディは固く拳を握りながら、なにかを決心したようだった。
【さあ、日が暮れる前に洞窟から出るぞ。夜になると、ここは急激に冷え込むからな。メイのことはオレが暖められるが、あとのふたりは凍死してしまうぞ】
「それは困る! じゃあみんなで仲良くギルドに戻ろっか!」
「そうですね。依頼はなんとかこなせましたし。報酬が楽しみです」
「グレッグたちがしたことも、マスターに報告しないといけないな」
ここに来るまでで散々疲れたが、ギルドに戻ってもやることはたくさんだ。私たちが全員無事で、しかもスモアまで連れて戻ってきた事実を知ったら、グレッグはどんな顔をするだろうか。
グレッグのしたことは許せない。マスターに説明して、それ相応の処分を受けてもらわないと!
私たちは来た道を戻り、ギルドへ戻ることにした。
町へ着いた瞬間から、みんなスモアを見てぎょっとした顔をしている。
そりゃあそうか。魔獣が堂々と道の真ん中を、人間と歩いているんだもの。
「メイちゃん、そのホワイトタイガーは……?」
仲の良い商人が偶然通りかかり、恐る恐る私に話しかけてきた。
「北の洞窟にいた魔獣さん! 今日から私の従魔になったの! スモアっていうんだよ。かっこいいでしょ?」
「えっ! メイちゃんの従魔に!? すごいなぁ! こんな大きな魔獣を手なずけるなんて……」
「スモアは危害を加えたりしないから、怖がらないで大丈夫だよ。ねっ? スモア」
私がスモアの頭を撫でながら言うと、スモアは尻尾を振りながら頷いた。
私と商人の会話を聞いて、今まで遠巻きに見ていた町の住人がちょっとずつ私たちのほうへ近寄ってくる。みんなスモアに興味津々みたいだ。スモアもこれから、この町に馴染んでいけるといいなぁ。
「マスターに今回の依頼についていろいろ報告があるんだが、執務室へ通してもらえるか確認してもらっていいかな?」
ギルドに戻ると、フレディが受付嬢に言った。受付嬢の視線はスモアに釘付けになっていたが、我に返るとバタバタと奥の部屋へと走って行った。
マスターの許可が出たようで、私たちは執務室へと通される。
「無事解決してくれたようだな! よくやった! 怪我はないか!?」
受付嬢に私たちが依頼をこなせたことを聞いたのか、部屋に入るなりマスターが笑顔で出迎えてくれた。
「はい! 全員大丈夫です!」
「おおそうかメイちゃん! 魔獣に攻撃されたりしなかったか?」
「はい! スモアはとってもいい魔獣でした!」
「すもあ?」
マスターが首を傾げると、スモアがフレディとマレユスさんの間から姿を現した。
「き、北の洞窟の魔獣!?」
驚き後ろに後ずさるマスター。受付嬢、スモアが一緒にいることはマスターに言っていなかったのね……。
私はマスターに、スモアが従魔になったいきさつを説明した。
「メイちゃんにテイム能力があったとは。お前たちは知っていたのか?」
フレディとマレユスさんは、マスターからの問いかけに同時に首を振った。
私が持ってた特殊能力というのは、テイム能力というらしい。
「メイちゃんにはいつも驚かされっぱなしだな! ギルドにテイマーは多くないし、こんな魔獣を従えているのは、うちのギルドではメイちゃんだけだ。これからもよろしく頼むよ」
「任せてください。スモアと一緒にがんばります!」
これからはさらに依頼が増えそうだ。お金を稼ぐスピードも今までより早くなりそう。夢が叶うのは、そんなに先じゃないかも!
あ、でも冒険者をやめたらスモアは私についてきてくれないかな……。できればスモアも一緒に来てほしいけど……。もふもふとスローライフなんて、想像しただけで顔がにやけるもの。一応その時がきたら、スモアの意思を確認してみよう。
「マスター。これは大事な話なんだが、今回の事件には黒幕がいたんだ」
私が未来のことを考えていると、フレディが一歩前に出てマスターにそう言った。そうだ。早くグレッグたちのやったことをマスターに報告しないと。
「黒幕? くわしく教えてくれ」
マスターの表情が険しくなる。
そして、スモアが暴れたり(実際には痛みに苦しんでいただけ)、コボルトが大量発生したのはグレッグたちの仕業だということを話した。私とフレディが気にくわなくて、仕返しするためだったということも。
「……あいつは強くて、勇敢さもある。気性は荒いが、将来は立派な剣士になると思っていた。だが、どうやらここまでのようだな。私情で人間と魔獣の約束を破るなんて、許されることではない」
スモアが私の隣で、そう語るマスターのことをじっと見つめている。
「お前たちには迷惑をかけたな。報酬などの件は後日話す。すまないが、俺は今すぐグレッグと話をつけてくる」
マスターはそう言って、早足で執務室から出て行った。
その時、ちょうど入れ違いで執務室にミランダさんがやって来た。
「ミランダさん!」
「メイちゃん、こんにちは。遊びに来たら受付嬢にここにいるって聞いて、勝手にきちゃった。あ、おふたりもこんにちは」
てへ、と舌を出すミランダさんは、今日も女神のように美しい。フレディとマレユスさんは、特に返事もせず軽く頭を下げるだけだ。美女を前に緊張してしまうのは、ふたりとも同じらしい。
「あら、この子は?」
ミランダさんがスモアを見てそう言った。
「スモア。私の従魔なの」
「従魔ですって? メイちゃん、聖女以外にもいろんなことができるのね! 羨ましいわ。私はほかになんにもできないもの」
そのひとつの能力で最強にまで上り詰めているのだから、ミランダさんはじゅうぶんすごい人だと思う。
「スモア、私はミランダっていうの。メイちゃんのお友達よ。どうぞよろしくね」
その場にしゃがみ込み、スモアに自己紹介をするミランダさん。スモアは返事の代わりにか、ふんっと大きく鼻を鳴らした。
「あ、そういえばギルドでなにかあったの? マスター、怒ってるように見えたけど」
「あぁー……。グレッグがやらかしちゃったから。マスターが直接話をつけにいくみたい」
ミランダさんに、かつての仲間であるグレッグたちの話をするのは少々気が引ける。マスターのあの様子を見ると、大きな処分を受けるのは間違いないだろうし。
「彼とその仲間は、間違いなくギルド追放でしょうね」
「追放? ……なにをしたの?」
詳細を話すのをためらっていたのに、突然マレユスさんがそんなことを言い出したせいで、ミランダさんに話さざるを得ない状況になってしまった。
フレディが代表してミランダさんに事情を説明する。話を聞き終えると、ミランダさんは立ち上がり、ぎゅっと拳を強く握った。
「なにやってるのよ。あの馬鹿……!」
そう言うミランダさんは、いつもと雰囲気が違い驚いた。そしてマスターの後を追うように、ミランダさんは来たばかりの執務室を後にした。
……ミランダさん、なんだかんだ言いながらもグレッグのことが気になるのかな。仲間だったわけだし、追放ってなると放っておけないのかも。執務室には私たちと、ミランダさんの甘い香りだけが残った。
すると、私のお腹が突然ぐぅぅ~っと音を立てた。
「ごめん。いっぱい動いたからか、お腹すいちゃった」
気の抜けた音のおかげで、ピリついた空間が途端に和やかになる。
「はは。そうだな。家に帰ってゆっくりご飯でも食べようか」
「そのご飯、作るのは私だけどね。フレディなんにもできないから。この前も目玉焼きを焦がしちゃったし」
「!? あなた、メイにご飯を作らせているのですか? 聞き捨てなりませんね。メイの手伝いもかねて僕もお邪魔します」
「ただメイの料理が食べたいだけだろ」
「なにか仰いました?」
ああ。またふたりの口げんかが始まった――と思ったら、なぜかスモアまでフレディを威嚇している。スモアまでこのくだらない言い争いに参加したら、収集がつかなくなるじゃない。
「スモア、なんだか俺にだけ当たりが強くないか?」
「あなたがいつも、メイのいちばんの理解者ヅラをしているからですよ。スモアとは気が合いそうです」
マレユスさんが言うと、スモアが大きく頷いた。
「あ、スモアは私の従魔だから、家ももちろん一緒だよね?」
【もちろんだ。どこに行く時も、メイが嫌がらない限りは一緒にいる】
嫌がるだなんてとんでもない。屋根裏部屋に、ギリギリスモアも一緒に眠れるかな。スモアのもふもふと眠りにつけたら、さぞかし気持ちよさそうだ。
「ということで、今日からスモアも一緒にフレディのお家にお世話になりますっ。いいよね?」
「……そうだな。いいぞ。スモアはメイの従魔だからな。」
若干間があったのは気になるけれど、フレディからのお許しがもらえた。
「じゃあ、食材を買って帰ろう!」
今日はマレユスさんもスモアもいるから、いつもより多めに買わなくちゃ。報酬は期待できそうだし、今日くらい奮発しちゃおう。
賑やかになりそうな食卓を楽しみにしながら、私たちは帰路についた。