5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
次の日からは、マレユスさんにもお願いしてカラスの捕獲に協力してもらうこととなった。作戦を立てると意気込んだものの、いい案は出てこなかったので、私達の中でいちばん頭のよさそうなマレユスさんの知恵を頼ることにしたのだ。
マレユスさんは「そんなの、現れた瞬間に僕のファイアボールをお見舞いしてやりますよ」と自信満々に言った。マレユスさんは私の何倍も瞬発力がある。その手があったか! と喜んだのも束の間、商人たちに「周りの商品まで巻き込まれるからやめてくれ」と一蹴されその案は却下となった。
振り出しに戻った私たちは、その日も、その次の日も、ただカラスが盗みを働く姿を目撃するだけで終わった。去り際のカラスの鳴き声が、役立たずの私を嘲笑っているようだった。
声が聞こえる気配もまったくないし、どうしたものか。私が守るだなんて大口を叩いておいてこの結果は情けない。
カラスの捕獲依頼を受けてから五日目。
いつものようにカラスが華麗に盗みをし逃げ去ったあと、空を見上げながらマレユスさんがこんなことを言い始めた。
「……あのカラス、いつも同じルートを辿っていますね」
「え?」
「ほら、見ていてください。まず東側に飛んで、町を越えると北側に方向転換しますから」
マレユスさんに言われ、私もフレディもスモアも、カラスの行く先を目で追った。すると驚くことに、カラスはマレユスさんの言った通りのルートを飛んでいるではないか。
「途中で森に姿を消すのでここからだと見失ってしまいますが、北東に位置する場所で待機していれば、カラスと遭遇し行先を突き止められるかもしれませんね。きっと、そこがあのカラスの住処に違いありません」
カラスが飛んできそうな場所に先回りして、そこから追い詰めるということか。
「さすがマレユスさん! 早速森の北東側に――」
「メイ、それは危険だ。あの辺りはモンスターが多い。しかもこれからだと夜になる。行くなら明日、明るい時間に出直したほうが無難だ」
今から森に行こうとするとフレディに止められた。この五日間なにもできなかったから、一刻も早く動き出したいという思いが私にあったのだ。でも、フレディの言っていることは最もだし、素直に聞いておこう。
「そう。厄介なことに、北東側は森の中でもモンスターとの遭遇率はかなり高い。それともうひとつ悩ましいのは、あのカラスの驚異的なスピードです。あんな速さで飛ばれては、人間の足ではとても追いつけない。」
【それならオレの足を頼ればいい。自慢じゃないかなり速いぞ】
スモアの発言を、私はマレユスさんに伝える。
「その手がありましたか。……うん。これならいけるかもしれません。みなさん。僕にいい考えがあります」
マレユスさんはなにかを思いついた様子だ。私たちはマレユスさんの周りに集まり、その考えとやらを教えてもらった。
カラスが盗みを働く以外の時間、どこにいるか定かではない。そのため、いつもと同じ夕方にこの作戦は実行されることに。
まずは、私たちを別の場所に配置する。
商店街にはマレユスさん。森の北東側に私とスモア、そしてフレディ。
「最初に仕掛けるのは僕です。現れたカラスに確実に、時魔法の〝スロウ〟をかけます。……お恥ずかしながら、僕の時魔法はまだ不完全です。あまり大きな効果は期待できませんが、若干動きを遅くすることくらいはできるはずです」
魔法が成功し、カラスがいつもと同じルートを進んでいることを確認したら、マレユスさんが空に魔法で白煙弾を放ち森にいる私たちに合図。
「次に動くのはメイとスモア。空にカラスの姿を確認したら、スモアの背中にメイを乗せてカラスを追いかけてください。スロウの効果は一定期間続くので、スモアの足なら追いつけることを信じます。メイはカラスを見失わないよう、スモアに進む方向を指示してあげるように」
ここでは私とスモアのチームワークが重要となる。いわば私はスモアの目となるということか。責任重大だ。頑張らないと!
「住処を見つけることができたら、カラスの捕獲かテイムを試みてください。町だと関係ない人を巻き込む可能性があるので攻撃魔法はなかなか使えませんが、森なら大丈夫でしょう」
「はい! 絶対に捕まえてみせます!」
「……あのー。ちょっといいいか?」
ここまで黙って作戦を聞いていたフレディが、控えめにそっと手を上げた。
「この時点でカラスを捕まえるまでいってるけど、俺はなにをしたらいいんだ? 出番なしなんて言わないよな?」
そうだった。気づいてなかったが、言われてみるとフレディはまだ一度も名前が挙がっていない。
「まさか。あなたにしか任せられない重大な任務がありますよ。……忘れていませんか? 森の北東側にはモンスターが多いことを。メイたちがカラスを追うのに、モンスターがいては邪魔になる」
あ。私、マレユスさんの考えがわかっちゃったかも……。フレディもなにかを察したような顔をしている。
「フレディ、あなたは誰よりも先に森に入り、周辺にいるモンスターを一掃しておいてください。できますよね? 今ではギルド最強の冒険者なんですから」
「誰に聞いているんだ。できるに決まってる。メイを守るのは俺の役目だからな」
フレディを煽るマレユスさんと、まんまとそれに乗っかるフレディ。
ひとりで長時間モンスターの相手をするなんて大丈夫だろうか。私がいないから回復魔法を使える味方もいないし……。心配だから、ポーションをありったけ持たせておこう。
「決まりましたね。それでは、決行は明日。みなさん今日は早めに寝るように」
「はーい!」
マレユスさん、学校の先生みたいだな。
明日に向け、本日はこれにて解散となった。私はマレユスさんの言いつけをきちんと守り、早めに布団にもぐりみスモアと一緒に眠りについた。
そして次の日――作戦決行の時がやってきた。
マレユスさんは「そんなの、現れた瞬間に僕のファイアボールをお見舞いしてやりますよ」と自信満々に言った。マレユスさんは私の何倍も瞬発力がある。その手があったか! と喜んだのも束の間、商人たちに「周りの商品まで巻き込まれるからやめてくれ」と一蹴されその案は却下となった。
振り出しに戻った私たちは、その日も、その次の日も、ただカラスが盗みを働く姿を目撃するだけで終わった。去り際のカラスの鳴き声が、役立たずの私を嘲笑っているようだった。
声が聞こえる気配もまったくないし、どうしたものか。私が守るだなんて大口を叩いておいてこの結果は情けない。
カラスの捕獲依頼を受けてから五日目。
いつものようにカラスが華麗に盗みをし逃げ去ったあと、空を見上げながらマレユスさんがこんなことを言い始めた。
「……あのカラス、いつも同じルートを辿っていますね」
「え?」
「ほら、見ていてください。まず東側に飛んで、町を越えると北側に方向転換しますから」
マレユスさんに言われ、私もフレディもスモアも、カラスの行く先を目で追った。すると驚くことに、カラスはマレユスさんの言った通りのルートを飛んでいるではないか。
「途中で森に姿を消すのでここからだと見失ってしまいますが、北東に位置する場所で待機していれば、カラスと遭遇し行先を突き止められるかもしれませんね。きっと、そこがあのカラスの住処に違いありません」
カラスが飛んできそうな場所に先回りして、そこから追い詰めるということか。
「さすがマレユスさん! 早速森の北東側に――」
「メイ、それは危険だ。あの辺りはモンスターが多い。しかもこれからだと夜になる。行くなら明日、明るい時間に出直したほうが無難だ」
今から森に行こうとするとフレディに止められた。この五日間なにもできなかったから、一刻も早く動き出したいという思いが私にあったのだ。でも、フレディの言っていることは最もだし、素直に聞いておこう。
「そう。厄介なことに、北東側は森の中でもモンスターとの遭遇率はかなり高い。それともうひとつ悩ましいのは、あのカラスの驚異的なスピードです。あんな速さで飛ばれては、人間の足ではとても追いつけない。」
【それならオレの足を頼ればいい。自慢じゃないかなり速いぞ】
スモアの発言を、私はマレユスさんに伝える。
「その手がありましたか。……うん。これならいけるかもしれません。みなさん。僕にいい考えがあります」
マレユスさんはなにかを思いついた様子だ。私たちはマレユスさんの周りに集まり、その考えとやらを教えてもらった。
カラスが盗みを働く以外の時間、どこにいるか定かではない。そのため、いつもと同じ夕方にこの作戦は実行されることに。
まずは、私たちを別の場所に配置する。
商店街にはマレユスさん。森の北東側に私とスモア、そしてフレディ。
「最初に仕掛けるのは僕です。現れたカラスに確実に、時魔法の〝スロウ〟をかけます。……お恥ずかしながら、僕の時魔法はまだ不完全です。あまり大きな効果は期待できませんが、若干動きを遅くすることくらいはできるはずです」
魔法が成功し、カラスがいつもと同じルートを進んでいることを確認したら、マレユスさんが空に魔法で白煙弾を放ち森にいる私たちに合図。
「次に動くのはメイとスモア。空にカラスの姿を確認したら、スモアの背中にメイを乗せてカラスを追いかけてください。スロウの効果は一定期間続くので、スモアの足なら追いつけることを信じます。メイはカラスを見失わないよう、スモアに進む方向を指示してあげるように」
ここでは私とスモアのチームワークが重要となる。いわば私はスモアの目となるということか。責任重大だ。頑張らないと!
「住処を見つけることができたら、カラスの捕獲かテイムを試みてください。町だと関係ない人を巻き込む可能性があるので攻撃魔法はなかなか使えませんが、森なら大丈夫でしょう」
「はい! 絶対に捕まえてみせます!」
「……あのー。ちょっといいいか?」
ここまで黙って作戦を聞いていたフレディが、控えめにそっと手を上げた。
「この時点でカラスを捕まえるまでいってるけど、俺はなにをしたらいいんだ? 出番なしなんて言わないよな?」
そうだった。気づいてなかったが、言われてみるとフレディはまだ一度も名前が挙がっていない。
「まさか。あなたにしか任せられない重大な任務がありますよ。……忘れていませんか? 森の北東側にはモンスターが多いことを。メイたちがカラスを追うのに、モンスターがいては邪魔になる」
あ。私、マレユスさんの考えがわかっちゃったかも……。フレディもなにかを察したような顔をしている。
「フレディ、あなたは誰よりも先に森に入り、周辺にいるモンスターを一掃しておいてください。できますよね? 今ではギルド最強の冒険者なんですから」
「誰に聞いているんだ。できるに決まってる。メイを守るのは俺の役目だからな」
フレディを煽るマレユスさんと、まんまとそれに乗っかるフレディ。
ひとりで長時間モンスターの相手をするなんて大丈夫だろうか。私がいないから回復魔法を使える味方もいないし……。心配だから、ポーションをありったけ持たせておこう。
「決まりましたね。それでは、決行は明日。みなさん今日は早めに寝るように」
「はーい!」
マレユスさん、学校の先生みたいだな。
明日に向け、本日はこれにて解散となった。私はマレユスさんの言いつけをきちんと守り、早めに布団にもぐりみスモアと一緒に眠りについた。
そして次の日――作戦決行の時がやってきた。