5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
ルカのことをふたりに話し終えた頃、私たちは商店街に到着した。
空はだいぶ暗くなってきて、商人たちは揃って店じまいをしている最中だった。
私はルカの服の裾を引っ張り、ルカのことを見上げる。彼は私と目を合わせると、こくんと頷いた。
「みなさん、ちょっといいですか!?」
私は商人たちを呼びかけて、青果屋さんの前に集まってもらった。
「犯人は捕まえました。もう心配する必要はありません」
「本当か!?」
最初に反応したのは、いちばん被害を受けた青果屋のお兄さん。それに続くように、みんなが喜びと安堵の声を上げた。
「それで、カラスはどうなったんだ?」
「もちろん、退治してくれたよな!?」
商人に詰め寄られ、私は苦笑しながら言った。
「えーっと……彼が今回の事件の犯人、カラスのルカです」
「どうも」
ぺこりとルカは一礼した。
「そうじゃなくて! 先にごめんなさいでしょ?」
「あ、そうだった。……みなさん、今回は悪さしてごめんなさい」
再度、頭を下げるルカ。そんなルカを、商人たちはぽかんと口を開けて眺めている。当たり前だけど、状況判断ができていないようだ。
「メイちゃん、これはどういうことなんだ? こいつがカラスっていうのは……?」
「ルカは魔物化能力を持つ人間だったんです。それでカラスの姿になっていたみたいで。私も最初は驚きましたけど、本当の話です」
「……たしかに、そいつが持っている袋はいつもカラスがくわえていたものと同じだ」
青果屋のお兄さんが、ルカが腕にかけていた袋に気づきそう言った。袋のことで、周囲の人たちもルカがカラスだということを信じ始めた。
「ほらルカ、もう一度ちゃんと謝って? なんでこんなことしたのか言わないと」
「……置いてあるからもらっていいと思って……悪いことって知りませんでした。ごめんなさい」
ルカが言うと、青果屋のお兄さんが眉をひそめる。
「知らなかっただって?」
「ルカはずっと浮浪者として生きてきたみたいで、なんというか常識がないんです。お金を払わなきゃいけないことも知らなかったみたいで……」
ルカが自分からうまく説明できそうにないため、私が商人に説明した。
「俺、みんなに許してもらえる? 無理だったら……もう逃げられなさそうだし、死ぬしかないかぁ」
またそんなことを言い出したルカに私が半ば呆れていると、商人たちはルカのその言葉に慌て始めた。
「い、いや! なにもそこまでしなくても……!」
「そうよ。反省してるみたいだし、許してあげてもいいんじゃない?」
「俺、許してもらえるの? よかった。ありがとう」
ふわりとルカが微笑んだ。ドキッとするほど綺麗な笑みに、商人たちの顔は緩みっぱなしだ。女性だけでなく、男性の商人までも見とれている。どうやらルカの美貌は男女共通らしい。……こんな美しい見た目を持ちながら、カラスでいるほうが楽だなんて。ルカは自分の価値をまったくわかっていないんだから。
「待て。お前らは被害が少なかったからそう言えるかもしれないけど、俺は簡単にこいつを許すことなんかできねぇ! ……どうしてうちの青果店ばかり狙ったんだ。個人的な恨みでもあったのか」
お兄さんがルカに詰め寄り、怒りを露わにした。
怖い顔をしたお兄さんを見ながら、ルカはぱちぱちと瞬きをすると、平然とした顔で口を開いた。
「……こいつがここの果物をすごく気に入って、ここのしか食べなくなった。俺も気に入っちゃって……この店の果物がいちばんおいしかったから」
ルカはそう言って、腕の中で眠る子猫を見つめた。
「……そ、そんなにうちのはうまかったのか?」
「うん。俺いろんなところで果物食べてきたけど、ここがダントツおいしいよ」
あんなに怒っていたお兄さんの顔が、みるみるうちに明るい笑顔に変わっていく。
「そうかそうか! うちのは実家の果樹園から取り寄せているやつなんだ! そんなに気に入ってもらえるなんて、親父もお袋も大喜びだ! ありがとな! はっはっは!」
お兄さんはルカの背中を叩きながら、愉快な笑い声を上げた。
――なんかよくわからないけど、無事にルカと商人は和解できたようだ。
その後話し合いを経て、二度と盗みをしないという約束で、ルカは今回の件をチャラにしてもらえることになった。
しかも、青果屋のお兄さんが子猫を自分の家で引き取ると言ってくれた。お兄さんはひとり暮らしが寂しかったようで、動物を飼いたいと思っていたそうだ。これでいつでも子猫は大好きな果物が食べられるようになった。
ルカは浮浪者。足の悪い子猫をずっと世話することはいろいろと難しいだろう。ルカは自分でそのことに気づいていたのか、嫌がることなくお兄さんに子猫を託した。
「無事解決したことだし、ギルドへの報告は明日の朝にして、今日はもう帰ってご飯にしよう! マレユスさんとルカも一緒に来て。私がごちそうするから!」
空はいつのまにか真っ暗に。私たちはみんなでフレディの家に帰り、テーブルを囲んだ。
今日は人数が多いので簡単なメニューだ。朝作ったマカロニサラダとミートソースパスタ。マレユスさんが手伝ってくれたので、出来上がりに時間はかからなかった。
「ルカはこれからどうするの?」
「うーん。猫の様子を見に行きたいから、しばらくはこの町にいようかなぁ」
「だったら仕事を探さないと。ルカ、なにか得意なことないの?」
私が聞くと、ルカは口の端にミートソースをつけたまま言う。
「……特技かぁ。わかんないや」
「お前、それで今までどうやって生きてきたんだよ」
呆れたようにフレディが言った。マレユスさんもため息をついている。
「人の持ち物をこっそりもらったり、あと迷路みたいな洞窟に入って宝箱探したりしてたよ。たまにあるんだよね、そういう変な洞窟。罠も多いけど、慣れれば全然平気。宝箱の鍵だって、小さな金具があれば開けられるようになったし――」
ルカが話している途中で、フレディが椅子から立ち上がった。
「そんなことができるのか!? お前、そういうことができる職業をなんていうか知ってるか?」
「……浮浪者?」
「シーフだよ! 盗みができて罠の回避も宝箱も開けられる。今の口ぶりだと、迷宮探索の経験があるな? お前、明日すぐにギルドにシーフとして登録するんだ。そんでもって、俺の迷宮探索に同行してくれ!」
ルカは浮浪者として生きながら、シーフとしての能力を自然と身に着けていたんだ。ルカがギルドに入れば、フレディが保留にしていたランク昇格試験を受けることができる。
「シーフ……? ギルドってのに登録したら、なにかいいことある?」
相変わらずミートソースをつけたまま、ルカが私に問いかけた。
「あるよ。それが仕事になるもの。ギルドで受けた依頼をこなせば、いろんな報酬がもらえる。ギルドでお金を稼げば、商店街の果物も買えるよ!」
「そうなんだ。じゃあ登録する」
「よしっ! これで試験が受けられる!」
ガッツポーズをするフレディを見て、私までテンションが上がってきた。
捕まえたカラスが人間で、しかもシーフの才能があったなんて。棚からぼたもちとはこういうことをいうのか。
「よかったねフレディ!」
「ああ。同行者は四人までだから、ここにいるみんなで迷宮探索に行こう!」
「待ってください。僕は行くとは言っていませんよ」
あ、マレユスさんには迷宮探索の話をしていなかったんだ。
「マレユスさんがいなくてどうするんですか! 迷宮探索に魔導士のマレユスさんは絶対必要ですっ!」
「……メイが言うなら仕方ないですね」
あっさりと承諾するマレユスさん。なんだかんだいつも協力してくれる。そんなマレユスさんが私は大好き!
とても楽しい晩ご飯の時間が終わり、マレユスさんとルカは帰る時間に。
ルカは洞穴まで戻るのを嫌がり、結局しばらくのあいだマレユスさんが引き取ることになった(マレユスさんはめちゃくちゃ嫌がっていたけど、ルカのしつこさに折れたようだ)。
布団に入ると、どっと疲れが襲ってきた。
【今日はよく頑張ったな】
【うん……しゅもあ……おやしゅみ……】
【噛んでいるぞ。ふっ……おやすみ。メイ】
スモアと体を寄せ合いながら、私は深い眠りについた。
数日後。
ミランダさんに誘われ、私はスモアを連れて、また時計台近くのカフェに来ていた。
今日も楽しい女子会! そう思っていたのに……。
「どうしてみんないるの……」
なぜか六人用の大きなテーブルに座らされ、なぜかフレディとマレユスさんとルカがいる。
「俺たちもここのフルーツパフェが食べたかったんだ」
フレディがにこにこしながらそう言うと、マレユスさんとルカが頷いた。
「ごめんなさいミランダさん。せっかくの女子会だったのに――ああもう、ルカ、クリームついてる!」
「んー? メイ、とって」
「仕方ないなぁ……」
口の端を拭いてあげると、ルカは満足げな表情を浮かべた。
「メイ、なんかお母さんみたい。一緒にいると落ち着く」
「へっ? こ、こんな大きな子供いりません!」
「えー。残念」
七歳児に〝お母さん〟ってどうなの? そう思いながらも、ルカの笑顔に不覚にもきゅんとしてしまったのは内緒だ。
「メイ、俺もクリームがついていないか確認してくれないか?」
「……フレディ、わざとつけたでしょ」
さっきまで綺麗に食べていたのに、急に口周りをクリームだらけにしたフレディが私にそう言ってきた。
「メイ、そんな馬鹿は放っときなさい」
【メイ、相手にするな】
「すごい。マレユスさんとスモアがシンクロしてる」
私たちのやり取りを見て、ミランダさんは楽しそうに笑っている。
「メイちゃんって、聖女じゃなくてテイマーとしても最強ね」
「え、どうしてそう思うんですか?」
「だってみんな、メイちゃんにすっかりテイムされてるんだもの」
おかしい……テイムできるのは魔獣や魔物だけのはずなんだけどなぁ。
「微笑ましい光景じゃない? ふふ!」
どこがと思いながらも、自分を取り囲むちぐはぐなメンバーを見て、私は自然と笑みがこぼれた。
空はだいぶ暗くなってきて、商人たちは揃って店じまいをしている最中だった。
私はルカの服の裾を引っ張り、ルカのことを見上げる。彼は私と目を合わせると、こくんと頷いた。
「みなさん、ちょっといいですか!?」
私は商人たちを呼びかけて、青果屋さんの前に集まってもらった。
「犯人は捕まえました。もう心配する必要はありません」
「本当か!?」
最初に反応したのは、いちばん被害を受けた青果屋のお兄さん。それに続くように、みんなが喜びと安堵の声を上げた。
「それで、カラスはどうなったんだ?」
「もちろん、退治してくれたよな!?」
商人に詰め寄られ、私は苦笑しながら言った。
「えーっと……彼が今回の事件の犯人、カラスのルカです」
「どうも」
ぺこりとルカは一礼した。
「そうじゃなくて! 先にごめんなさいでしょ?」
「あ、そうだった。……みなさん、今回は悪さしてごめんなさい」
再度、頭を下げるルカ。そんなルカを、商人たちはぽかんと口を開けて眺めている。当たり前だけど、状況判断ができていないようだ。
「メイちゃん、これはどういうことなんだ? こいつがカラスっていうのは……?」
「ルカは魔物化能力を持つ人間だったんです。それでカラスの姿になっていたみたいで。私も最初は驚きましたけど、本当の話です」
「……たしかに、そいつが持っている袋はいつもカラスがくわえていたものと同じだ」
青果屋のお兄さんが、ルカが腕にかけていた袋に気づきそう言った。袋のことで、周囲の人たちもルカがカラスだということを信じ始めた。
「ほらルカ、もう一度ちゃんと謝って? なんでこんなことしたのか言わないと」
「……置いてあるからもらっていいと思って……悪いことって知りませんでした。ごめんなさい」
ルカが言うと、青果屋のお兄さんが眉をひそめる。
「知らなかっただって?」
「ルカはずっと浮浪者として生きてきたみたいで、なんというか常識がないんです。お金を払わなきゃいけないことも知らなかったみたいで……」
ルカが自分からうまく説明できそうにないため、私が商人に説明した。
「俺、みんなに許してもらえる? 無理だったら……もう逃げられなさそうだし、死ぬしかないかぁ」
またそんなことを言い出したルカに私が半ば呆れていると、商人たちはルカのその言葉に慌て始めた。
「い、いや! なにもそこまでしなくても……!」
「そうよ。反省してるみたいだし、許してあげてもいいんじゃない?」
「俺、許してもらえるの? よかった。ありがとう」
ふわりとルカが微笑んだ。ドキッとするほど綺麗な笑みに、商人たちの顔は緩みっぱなしだ。女性だけでなく、男性の商人までも見とれている。どうやらルカの美貌は男女共通らしい。……こんな美しい見た目を持ちながら、カラスでいるほうが楽だなんて。ルカは自分の価値をまったくわかっていないんだから。
「待て。お前らは被害が少なかったからそう言えるかもしれないけど、俺は簡単にこいつを許すことなんかできねぇ! ……どうしてうちの青果店ばかり狙ったんだ。個人的な恨みでもあったのか」
お兄さんがルカに詰め寄り、怒りを露わにした。
怖い顔をしたお兄さんを見ながら、ルカはぱちぱちと瞬きをすると、平然とした顔で口を開いた。
「……こいつがここの果物をすごく気に入って、ここのしか食べなくなった。俺も気に入っちゃって……この店の果物がいちばんおいしかったから」
ルカはそう言って、腕の中で眠る子猫を見つめた。
「……そ、そんなにうちのはうまかったのか?」
「うん。俺いろんなところで果物食べてきたけど、ここがダントツおいしいよ」
あんなに怒っていたお兄さんの顔が、みるみるうちに明るい笑顔に変わっていく。
「そうかそうか! うちのは実家の果樹園から取り寄せているやつなんだ! そんなに気に入ってもらえるなんて、親父もお袋も大喜びだ! ありがとな! はっはっは!」
お兄さんはルカの背中を叩きながら、愉快な笑い声を上げた。
――なんかよくわからないけど、無事にルカと商人は和解できたようだ。
その後話し合いを経て、二度と盗みをしないという約束で、ルカは今回の件をチャラにしてもらえることになった。
しかも、青果屋のお兄さんが子猫を自分の家で引き取ると言ってくれた。お兄さんはひとり暮らしが寂しかったようで、動物を飼いたいと思っていたそうだ。これでいつでも子猫は大好きな果物が食べられるようになった。
ルカは浮浪者。足の悪い子猫をずっと世話することはいろいろと難しいだろう。ルカは自分でそのことに気づいていたのか、嫌がることなくお兄さんに子猫を託した。
「無事解決したことだし、ギルドへの報告は明日の朝にして、今日はもう帰ってご飯にしよう! マレユスさんとルカも一緒に来て。私がごちそうするから!」
空はいつのまにか真っ暗に。私たちはみんなでフレディの家に帰り、テーブルを囲んだ。
今日は人数が多いので簡単なメニューだ。朝作ったマカロニサラダとミートソースパスタ。マレユスさんが手伝ってくれたので、出来上がりに時間はかからなかった。
「ルカはこれからどうするの?」
「うーん。猫の様子を見に行きたいから、しばらくはこの町にいようかなぁ」
「だったら仕事を探さないと。ルカ、なにか得意なことないの?」
私が聞くと、ルカは口の端にミートソースをつけたまま言う。
「……特技かぁ。わかんないや」
「お前、それで今までどうやって生きてきたんだよ」
呆れたようにフレディが言った。マレユスさんもため息をついている。
「人の持ち物をこっそりもらったり、あと迷路みたいな洞窟に入って宝箱探したりしてたよ。たまにあるんだよね、そういう変な洞窟。罠も多いけど、慣れれば全然平気。宝箱の鍵だって、小さな金具があれば開けられるようになったし――」
ルカが話している途中で、フレディが椅子から立ち上がった。
「そんなことができるのか!? お前、そういうことができる職業をなんていうか知ってるか?」
「……浮浪者?」
「シーフだよ! 盗みができて罠の回避も宝箱も開けられる。今の口ぶりだと、迷宮探索の経験があるな? お前、明日すぐにギルドにシーフとして登録するんだ。そんでもって、俺の迷宮探索に同行してくれ!」
ルカは浮浪者として生きながら、シーフとしての能力を自然と身に着けていたんだ。ルカがギルドに入れば、フレディが保留にしていたランク昇格試験を受けることができる。
「シーフ……? ギルドってのに登録したら、なにかいいことある?」
相変わらずミートソースをつけたまま、ルカが私に問いかけた。
「あるよ。それが仕事になるもの。ギルドで受けた依頼をこなせば、いろんな報酬がもらえる。ギルドでお金を稼げば、商店街の果物も買えるよ!」
「そうなんだ。じゃあ登録する」
「よしっ! これで試験が受けられる!」
ガッツポーズをするフレディを見て、私までテンションが上がってきた。
捕まえたカラスが人間で、しかもシーフの才能があったなんて。棚からぼたもちとはこういうことをいうのか。
「よかったねフレディ!」
「ああ。同行者は四人までだから、ここにいるみんなで迷宮探索に行こう!」
「待ってください。僕は行くとは言っていませんよ」
あ、マレユスさんには迷宮探索の話をしていなかったんだ。
「マレユスさんがいなくてどうするんですか! 迷宮探索に魔導士のマレユスさんは絶対必要ですっ!」
「……メイが言うなら仕方ないですね」
あっさりと承諾するマレユスさん。なんだかんだいつも協力してくれる。そんなマレユスさんが私は大好き!
とても楽しい晩ご飯の時間が終わり、マレユスさんとルカは帰る時間に。
ルカは洞穴まで戻るのを嫌がり、結局しばらくのあいだマレユスさんが引き取ることになった(マレユスさんはめちゃくちゃ嫌がっていたけど、ルカのしつこさに折れたようだ)。
布団に入ると、どっと疲れが襲ってきた。
【今日はよく頑張ったな】
【うん……しゅもあ……おやしゅみ……】
【噛んでいるぞ。ふっ……おやすみ。メイ】
スモアと体を寄せ合いながら、私は深い眠りについた。
数日後。
ミランダさんに誘われ、私はスモアを連れて、また時計台近くのカフェに来ていた。
今日も楽しい女子会! そう思っていたのに……。
「どうしてみんないるの……」
なぜか六人用の大きなテーブルに座らされ、なぜかフレディとマレユスさんとルカがいる。
「俺たちもここのフルーツパフェが食べたかったんだ」
フレディがにこにこしながらそう言うと、マレユスさんとルカが頷いた。
「ごめんなさいミランダさん。せっかくの女子会だったのに――ああもう、ルカ、クリームついてる!」
「んー? メイ、とって」
「仕方ないなぁ……」
口の端を拭いてあげると、ルカは満足げな表情を浮かべた。
「メイ、なんかお母さんみたい。一緒にいると落ち着く」
「へっ? こ、こんな大きな子供いりません!」
「えー。残念」
七歳児に〝お母さん〟ってどうなの? そう思いながらも、ルカの笑顔に不覚にもきゅんとしてしまったのは内緒だ。
「メイ、俺もクリームがついていないか確認してくれないか?」
「……フレディ、わざとつけたでしょ」
さっきまで綺麗に食べていたのに、急に口周りをクリームだらけにしたフレディが私にそう言ってきた。
「メイ、そんな馬鹿は放っときなさい」
【メイ、相手にするな】
「すごい。マレユスさんとスモアがシンクロしてる」
私たちのやり取りを見て、ミランダさんは楽しそうに笑っている。
「メイちゃんって、聖女じゃなくてテイマーとしても最強ね」
「え、どうしてそう思うんですか?」
「だってみんな、メイちゃんにすっかりテイムされてるんだもの」
おかしい……テイムできるのは魔獣や魔物だけのはずなんだけどなぁ。
「微笑ましい光景じゃない? ふふ!」
どこがと思いながらも、自分を取り囲むちぐはぐなメンバーを見て、私は自然と笑みがこぼれた。