【短編】たぶん、その響きだけで。


───夢を操るのは簡単だった。

もともと予知夢を見るような体質だからだろうか。思っていた以上に自由が効いて、スムーズに星を消す予行練習みたいなものができた。


それを通して分かったのは、
星を消すと、その消した人物の存在事消えてしまうということ。

記憶だけじゃなく、俺に関わって変化したものすべてが、”最初から俺が関わらなかった形"に帰化すること。

簡単に言えば、俺が例えばどこかの建物に放火したとしても、
俺が消えた後はすっかり元通りになるということだ。


こんなに都合の良い話はない。

存在を懸けて地球を救うんだからこんぐらいは許してくれ、なんて心の中で贖罪しながら、
実はうたた寝しているスミにキスをしたことがある。


すごい柔らかかった。びっくりした。もうそれしか言葉は出てこなかった。



「……セナ?」

「っえ、スミ、起きて……?」

「んー?んん……サバ飯……」



……俺のキスはサバ飯味だったらしい。


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